挑む日


「えっ、なにそれ」

フォークに刺したケーキがポロッと落ちても気にしない。ボンゴレに戻ることを正ちゃんに話しながらケーキを食べていると正ちゃんも話があると言われた。きっとまた試験が近いからしばらく家に来るなとかそんなとこだろう。そう思っていたら。

「留学する。もう手続きは済ませて決定した」
「ちょ、ちょっと待って。留学!?私そんなの聞いてないよ!」
「最近落ち込んでたからいつ話そうか悩んでたんだ」
「落ち込んでなんかないし」
「…はいはい。とにかく元気出たみたいだから」

ぎゅっと腕を掴めばいつもは振り払われるのにじっとしている正ちゃん。冗談じゃないんだと分かってしまう。
ディーノさんに背中を押してもらいやる気に満ち溢れてたのに、突然の告白に力が抜ける。今までずっと一緒だったのに。一人暮らしだって両親に正ちゃんの隣に住むって言って許されたほど。
いつか離れることは分かってた。「正ちゃんは留学とかするんじゃないかなあ」正ちゃんが学校へ通う前思ってたことだ。きっと彼なら行くって思ってた。優秀な正ちゃんが自慢だった。けど、実際言われるとショックを隠しきれない。
つい昨日のことだ。

「はぁ…やる気抜けた」

なんとなく懐かしいボンゴレ会社B塔。廊下をとぼとぼと歩く。まだ誰にも会ってないが私の頭は社長や雲雀さんやリボーンさんではなく「正ちゃん」、「留学」でいっぱいだ。

「三咲?」
「…雲雀さん」

声に振り向けば欠伸をした雲雀さん。私を見て「へえ、来たの」と笑った。

「私、負けず嫌いですから」
「……あの人が言ったの」
「嬉しかったですよ」
「別に」

こっちが嬉しいと言ったのに別にとはどういうことだ。つい笑ってしまう。言わなくても雲雀さんには私のことは伝わったらしい。二人なら社長室にいると教えてくれた。

「紅茶飲みたいんだけど」
「へへ、分かりました。あとで雲雀さんのとこ行きます」

雲雀さんと別れて社長室の前まで歩く。良かった、雲雀さんのおかげでやる気が復活してきた。ぱちんとほっぺを叩く。今は正ちゃんからはなれないと。見返してやるんだから!

「おはようございます」
「え、あ、三咲!?」

目を見開く社長。ソファには足を組んだリボーンさん。彼は声を上げずに目線をこっちに向けた。

「こんにちはリボーンさん」
「お前、確か。…ああ、そういえば三咲って」
「え、…二人、知り合い?」
「ディーノさんのお店で」
「ディーノさん?なんで三咲がディーノさんを…」
「働いてましたから」
「はあ!?」

混乱してる社長をじっと見る。別にいつもと同じ普通っぽいけど。ちょっと面白い。熱があっても我儘なくせにたまにすごく甘えてくる変な人だ。
落ち着いた様子のリボーンさんと社長を交互に見て笑った。

「役立たずでもやっぱり必要らしいんで、仕事しに来ました」


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -