触れる日


「おーい三咲、テーブル拭いてくれ」
「…はーい」
「なんだよ機嫌悪いな」

こっちを覗き込むように体を傾け三咲の顔を覗く。彼女は動いた彼から逃げるようにふきんを持ってテーブルに向かった。そんな三咲の反応に彼は首を傾げた。

「なんでもないですよ」
「言ってみろって」
「…安心できないんです」
「なにが?」
「今ここには私達しかいません」
「うん」
「ロマーリオさんがいないんですよ」

必死になって言った私の言葉に笑って聞いていたディーノさんは固まった。
そしてなぜだか狼狽える。

「あ、いや…三咲。俺、別に…ロマーリオがいないからって変なことしないよ?」
「そうじゃないですよ!!あ、ディーノさん動かないでこっちこないで!どうせ転ぶから!!!」

慌てて引き止める。だがその前にディーノは足を滑らせ、ぱりーんとソーサーが割れる音がする。ロマーリオに早く帰ってきてくれと心の中で泣いた。

「あっ、いけね」
「ディーノさん!私がやるから!」

素早く箒と塵取りを取りに行く。いつもならこの時間雲雀さんと休憩してる時間だ。
ボンゴレカンパニーの社長である沢田綱吉さんの元家庭教師が来たらしく秘書を勝手に変えたことを隠すためその先生が日本にいるはずの一ヶ月の間雲雀さんの紹介でディーノさんの経営する喫茶店で働くことになった。
なんでもディーノさんのこれは副業でボンゴレカンパニーよりは小さいけど結構すごいとこの社長らしく、その関係で雲雀さんとも綱吉さんとも知り合いらしい。

「ごめん!俺が割ったのに…」
「大丈夫です。あ、指切った」
「ばかあああ」

箒で掃いていると破片が飛び血が出てくる。でもそんな大したこともない傷だし、と三咲は手を動かした。
するといつにも増して真面目な顔をしたディーノさんが「貸して」と私の手を掴む。どっからか取って来たらしい絆創膏を指に貼った。
「大丈夫って言った途端ケガするとか、気をつけろよな」とさっきの顔からいつもの笑顔になる。
三咲はお前に言われたくないと口に出さずにツッコんだ。

「……いつまで手握ってんですか」
「え?あっ、いや…変なことしようとしたんじゃなくて」
「分かってます。ありがとうございます」

三咲が笑ったのが意外だったのかディーノは目をぱちぱちさせた。そしてちょうど同時に入口のドアが開く。

「あぁ〜悪いな遅くなっ……社長、いくらなんでも弟分の女に手出しちゃダメだろ?」
「はあ!?ちちちちちげーよ!」

ロマーリオは帰ってきた途端ディーノをいじる。からかわれていると気付いてないのか必死に否定するディーノ。正直者っていうか、優しいお兄さんタイプだ。笑った顔も全く嫌みっぽくない。三咲は二人のやりとりを見ながら溜息を吐いた。

同じ社長でも、全然違う


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -