失う日


「…んー」

電話が鳴る。もぞもぞと三咲はマクラに顔を埋めたまま携帯を探す。携帯画面を見るとまだ朝の5時だ。ピッ、と電源ボタンを押す。こんな時間に誰だ、マナーのなってないやつめ。着信履歴を見ると「沢田綱吉」という見覚えのある名前。

「………知らなーい」

まだ暗いじゃん。寝ぼけてたんですー。と言い訳を呟きもう一度枕に沈む。すると数秒後にまた鳴り始めた。

「も、もしもし…?」
「なに切ってんだよ」
「え…なにが?今起きたんですよ」
「嘘つけ。…今日は会社来なくていいから。つーか来るな」
「了解しました」
「順応性高いな。スケジュール作りにはだいぶかかったのに」
「それとこれとは別ですから」

今日は仕事が休み、ということに機嫌が良くなる。夜、正ちゃんが帰ってきたらそのまま夕飯食べてテレビ見てまったりしよう。三咲の中で今夜の予定を立てる。思いがけない休みは嬉しい。

「明日も来るなよ」
「分かりました!」
「軽く一ヶ月くらいは来ないでね」
「…はい!?ちょ、クビですか!!ごめんなさい次からちゃんと電話出ますから!!!」
「いやクビではないんだけどさ」
「なんだ」
「…三咲さ、普通どうしてだとか聞かない?何かあったんじゃないかとか思わないわけ」
「何かあったんですか」
「(俺が催促したみたいになってる…)リボーンが帰ってきたんだよ」
「はい?」
「だから、俺の元家庭教師が日本に帰ってきたんだよ。急に帰るとか言って。まじありえない。ま、とにかく勝手に秘書変えたからお前に会わせるわけにはいかないの」
「…あ、なんかそんな話したような……」

私の前に雇ってた秘書の人を推薦したんだったっけ?そんで勝手に辞めさせて代わりに私を雇ったとか、なんとなく思い出してきた。

「三咲がもう完璧に仕事覚えたなら会わせても大丈夫だと思うけど」
「……」
「無理だろ?」

もちろんその分給料は出ないから。よろしく。


軽く言った社長は「じゃあね」も無しで電話を切った。



え、一ヶ月仕事なしってこと?


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