求める日




三咲が会社に向かっている途中、急に突風がふいた。元から今日は風が強かったが今は特に酷い。
いつもなら強風など気にせず会社に向かうが今日は高いヒールを履いている。慣れなくて歩き辛い上に風に耐えながら歩くのはきつい。

「………ぎゃっ」

















「で?ちょうどコケた所に段差があって足をやっちゃったと」
「…うう、風なんて吹くから!」


綱吉はしゃがみ三咲の足を見ると溜息を吐いた。
こいつを秘書にしてから溜息が増えた気がする。いや、確実増えた。
けど最初は雲雀さんとの特訓なのにまず社長室に来たということは少しは考えて来てくれたということだろうか。


「…ほら。応急処置するから足出して」
「ん、」


転んだ後に膝を付いたらしく足首は捻り膝は擦りむいて血が滲んでいた。
ソファに座って足を出している三咲としゃがんでその足を持ち三咲を見上げる体制になっている綱吉。これじゃあどっちが社長か分からない。


「今日は動けないからここにずっと座ってます。よろしく」
「……分かったけど、なんでそんな偉そうなの?」
「帰りも大変なんでタクシー代下さい」
「お前ただ楽しようとしてるだけだろ」
「違いますよ!本当痛いんです。それに大人が膝にこんな絆創膏してるなんて恥ずかしいじゃないですか」
「…………確かに」


三咲の膝に絆創膏を貼りながら聞いていた綱吉は納得した。


「じゃあ今日はここにいて良いよ」
「はい」
「帰りは俺が送る」
「は…………はい?」


三咲は偉そうな顔から焦った表情に一変する。


「だから、三咲の家まで俺が送ってやる。送ってやるんだから礼の茶でも出せよ」
「それは……家に入れろと?」
「それ以外に何があるの」
「だ、駄目です!部屋汚い!」
「良いよ。想像付いてる」


どうせドラマや映画で見るようなぐちゃぐちゃな部屋だろうと思ってたから別に良い。
寧ろいつ行こうかと思ってたから丁度良いと綱吉は満足そうな笑みを浮かべた。


「あ、でも片付けてくれた………かな」
「え?三咲って両親と住んでるの?一人暮らしって言ってなかったっけ」
「いや一人暮らしですけど…」
「じゃあ良いじゃん」
「…………」


笑顔の綱吉に負けた三咲は部屋が汚いままでも文句言わないで下さいね、と言って溜息を吐いた。






求める日
「ここの秘書になってから溜息が多くなった気がする」
「お前が言うな」


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