見つめる日
「………」
「どうしたの、三咲」
「ひ、ひひ雲雀さんが2人!?」
嫌なものを見たような顔をする三咲。机に隠れながらこっちを覗いている様子は全然大人じゃない。
「雲雀さん分身の術使えたんですか」
机を挟んで向かい合うようにソファに座っている二人の雲雀さん。
片方の雲雀さんが深い溜息を吐いた。
「なに馬鹿言ってるの。前に他の社員に会わせるって言ったでしょ」
「他の社員て雲雀さんの分身だったんですか」
「違うから」
すると今まで黙っていたもう一人の雲雀さんが立ち上がった。こっちの雲雀さんは優しそうでにっこり笑った顔が似合う。
よく見ると髪が後ろで三つ編みに結われているのを三咲は発見した。
「初めまして、三咲さん。ボンゴレの海外支部を勤めている風といいます」
「声も似てる!あ、初めまして。海外ですか。道理でチャイナ服…」
「はい、よろしくお願いします」
雲雀は風を盗み見た。どうやら三咲のことは気に入ったらしい。これなら大丈夫だろう。
元から自分より人間付き合いが好きな風が嫌うことは無いかと納得する。それを見越して最初に三咲に風を会わせたのだから。
「私は三咲さんの話を聞いた時から秘書にするのを認めていましたよ」
雲雀をちらりと見た風は彼の心を読んだように切り出した。
「三咲さんの話をしている様子は、とても穏やかでしたから」
「……ふうん」
雲雀はぷい、とそっぽを向いた。
風は笑顔になる。
それに自分と雲雀を見て驚く者は随分いたが分身かと聞いてきたのは三咲が初めてだ。雲雀や綱吉には、こういう少し変わった子が必要だろう。
じっと風を見つめていた三咲はようやく口を開いた。
「あの、ちょっと触っていいですか」
「……?どうぞ?」
「ぎゃあ!髪の毛艶々さらさら!細いし…腰も細い……!風さんカッコイイ!!!」
「ええ?あ、ありがとうございます。」
ガバッと風の腰に纏わりついている三咲を見て雲雀は溜息を吐いた。
どうやらこっちも大層気に入ったみたいだ。
初対面にあんなに懐いてる奴もいないだろうと呆れる。風にしてもあれは礼を言うところじゃないだろう。といっても雲雀にも正しい反応の仕方は思い付かないが。
これ以上面倒は嫌だ。
とにかくここに綱吉が来ないことを願う雲雀だった。