目元に宝石を並べる

ぱちんっ

ベッドに腰掛けているセラは目の前に立っているユーリを思いっきり引っ叩いた。
叩いた手をそのままにセラは目を見開く。

「………生きてる…?」
「…夢か確認するときは自分を抓るんですよ。セラさん」

刺されて落ちたことは覚えてる。気が付けば自分の家で、エステルに酷く驚かれたのはついさっき。すぐにセラに会いに行ってあげてください、と急かされた。馴染みのあるドアを勝手に開け、部屋に入ればまず引っ叩かれた。
赤くなった頬をおさえるユーリ。唸るように言うが涙を浮かべたセラにぎょっとする。何か言おうとすればその前に勢い良く抱きしめられた。その腕の強さと震えた体にしまった、と思う。
そっと宥めるようにセラの背中を抱き返す。

「わりぃ、心配かけたな」
「……」

ぽんぽんと背中を叩くが顔をあげようともしない。ユーリからすればアレクセイとの戦いやソディアのことはついさっきにも思えるがセラ達からすれば違う。しかも、あの場から姿を消したのだ。特にセラは「消える」ことに酷く敏感だ。
下町にいた頃、セラが来て初めてユーリが牢に入れられたときもこんな感じだったと思い出す。後から町のみんなに聞けばユーリがどこにもいないと必死になって探してたと言う。食事も喉を通らなくて久しぶりに見たセラは顔が青白かった。今もあの時みたいな色をしている。
段々ユーリが捕まることには慣れていったようだがあの時と今は違う。

命がけの戦いをしてる最中だったし、前と違い恋人にあたる関係なのだからセラがユーリに前より執着してるのは自意識過剰ではないと思う。

「セラ」
「……生きてる」
「ああ、生きてるよ。デュークに助けられた」
「デュークに…?」

そこで初めて顔をあげる。目が合えば「私たちデュークに拾ってもらってばっかだね」と苦笑いした。
それを見るとソディアに刺されたことの恨みはないが後悔を感じる。好き勝手やってたけどもう自分一人の体じゃないんだな、と感じた。…妊婦によく言うセリフだけど。
セラの後頭をおさえキスする。しょっぱい味がしたのはきっと涙なんだろうと思いながら。セラも手を首にまわし答えてくれる。それが凄く嬉しい。

「…ユーリ…」
「もういなくなったりしないから」
「ほんと?」
「……ああ」

子どものように嬉しそうにするセラの頭をわしゃわしゃと撫でれば睨まれる。「でも別に!ユーリが死んじゃってても生きてくつもりだったしー」と拗ねる。ユーリはセラのほっぺをぐい、と抓った。

「感動の再会したばっかで嫌なこと言うよな」
「…ユーリ」
「ん?」
「……んーん、呼んだだけ」

曖昧に笑うセラ。まだ顔色が悪いがきっとこれから良くなっていくだろう。もう一度セラに唇を重ねた。