体育館へ行くとまだ誰も来て居なかった。ホームルームが早く終わったからだろうか。先生に捕まっていた田中を置いて来たのは失敗したかもしれない。
迷っていると一人体育館へ向かってくる男子が来た。
長身。メガネ。ヘッドフォン。無気力という言葉が似合うような男子だった。


「あの、バレー部さんですか?」
「……そうですけど」
「顧問の先生ってどこにいるか知ってます?入部届け出したくて」
「女子バレー部はコートが違うけど」
「あ、マネージャー志望です」
「ああ。…さあ。まだ職員室なんじゃないですかね」

これから一緒に活動してくっていうのに無関心だ。
静かでいいけども。

「これからよろしくお願いします。二年の宝生春加です。何年生ですか?」
「一年。月島蛍です」
「一年生!?」

大きいし落ち着いてるし三年生かと思った。胡散臭いと思われてるのかただの性格なのか訝しげに見てくる。

一年生と知ってからかいたくなってしまう。


「うえーい。気になる子とかできた?」
「なんですかいきなり。そういうのいいですから」
「えー。月島くんモテそうだから。あ、もう彼女いるとか」
「なんで会って間もない先輩にそんなこと言わなきゃならないんです?」
「先輩だから」
「…すごい理由」

呆れたと溜息をつく月島。少しムカついたのか人のこと聞く時は自分から言うのが礼儀じゃないですか?と笑って言ってくる。なるほど。無気力は無気力でもこういうタイプか。

「私はね、潔子さんとお近づきになりたいと思ってる」
「…はい?」
「あんな美人な人と一緒に部活が出来るなんて天国かよ、っていう下心はある」
「……いいんじゃないデスカ?」

面倒なこと言ってしまったと顔が語ってる。けどそう嫌な顔されるともっと虐めたくなる。まあ、本当のこと言ってるんだしいいよね。

「おい、なに騒いでんだ!月島!春加!」
「あ、田中。もう済んだの?」
「お前が授業中起こさないから呼び出されたんだ!」
「あんたいっつも寝てるじゃん」
「うわあ想像できますね」
「タケちゃんは職員室だぞ。あ、ちなみに下駄箱は空いてるとこ適当に使ってくれ。部員の加入が落ち着いてきたら場所決めるから」
「うん。分かった」

職員室に向かう春加を見送りながらこそこそと田中は月島の隣へ行った。春加に聞こえないボリュームで続けた。

「こいつにケンカ振るのはやめとけ。コイツの昔の異名は『女王様』だ。きっとお前でも口喧嘩じゃ叶わねえぞ」
「うわ、なんですかそれ」
「つーか時々行われる回し蹴りは気を失う威力だ」
「回し蹴りって。どういう扱い受けてるんです?」
「あれは確か…借りたノートによだれを」
「それは然るべき報いですよ」
「なにおう!」

ていうか。王様とか女王様とかウチの学校ってそういうのばっか。
ロクなヤツがいないと月島は溜息をついた。

この日の練習後、田中から春加が北川第一中学出身と知って、月島は顔を引き攣らせることになる。

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