及川中二、夢子中一。


「あっ」

ずべしゃっ

「なにやってんだ及川!!」
「いったー…ごめん。よそ見してた。暑さでまいってるのかな」

ボールが顔に当たってはじめてぼーっとしていたことに気付く。岩泉に怒鳴られながらてへ、っと頭のうしろに手をやる。

「…おい、鼻血でてんぞ」
「えっ」
「あーあ。なにやってんだお前」
「いったそー」
「あ、はは」

練習中なためティッシュもない。慌てて腕でおさえる。
マネージャーがティッシュを差し出し鼻につめる。

「いい男が台無しだよもう」
「は?」
「ちょ、岩ちゃんその顔こわい」
「お似合いじゃね」
「お似合いっすね」
「ちょっと!ティッシュがお似合いってどういうことなの!」

止まるまで休めと監督に言われ体育館の端に座る。
あー、今オレめちゃくちゃ恰好悪い。

「及川!そこ邪魔!!!」
「はーい」

移動しようと立つと腕に血が垂れていることに気付く。顔にぶつけて倒れ込んだとき腕も怪我したらしい。座ってじっとしてるうちに血が垂れ流れていたみたいだ。
夏で半そでで良かったというべきか。

「うわ、及川大丈夫?」
「うん、びっくりした。ていうか今うわって言ったよね?」
「いや言うでしょ…そんなんなってたら」
「ティッシュない?」
「どうぞ。もう保健室行ったら?」
「それな」

マネージャーに促され体育館を出る。あーでも今あんまりウロウロして人に見られたくないいんだけど。鼻にティッシュつめて腕にも怪我してなにしてるんだろうと笑ってしまう。

「「あ」」

保健室に入ると珍しい時期の転入生。春加ちゃんと再会した。

「なんでここに」
「ちょっと休んでました」
「大丈夫?」
「私より及川さんの方が今目に見えて痛そうですけど」
「…ただ転んだだけだし。止血すればこんなの平気だよ。ああー春加ちゃんに会いたくなかった!恰好良いオレのイメージが」
「ぷっ…確かにいまの及川さんは恰好良くないですね」
「……」

じとっと春加を見る。自分で言うのはいいけど人に笑われるのは面白くない。おさえておいたティッシュを取って捨てる。鼻血はおさまったらしい。腕は擦って怪我したため傷は浅いが見た目がグロい。見ていた春加は少し痛そうな顔をした。

「先生いないんで代わりにやりましょうか。消毒」
「そう?じゃあお言葉に甘えて」
「…」
「?」
「嫌だったら帰ります」
「え?お願いしたよね今」
「うわ、出たよっていう空気出てましたよ?ここぞとばかりにこういうことしたがる人いますよね。仲良くなるきっかけというか」
「ぎくっ」

指摘されて焦る。少し思ったことは事実だけど顔には出てなかったと思うんだけど。彼女は出会いがああだったため必然的に本音とかちょっと話してた。そういう面があることはバレてるとしても。

「…えと、どうします?」
「やって。」

腕を彼女に向け黙る。さっきからこの子にはマイナスなとこばっかり見られてる。春加は笑いながらバンドエイドや消毒液を取り出した。





「で、ケンカでもしたんですか?」
「は?」
「鼻血だして腕も怪我ってけっこう凄いですよ」
「違うって!部活で」
「ああ、そういえばこの前も言ってましたね。なにしてるんですか?」

消毒液を染み込ませた綿をポンポンしながら話す。
そういえば球技大会委員の時にそんな話したような、と思い出した。

「あ、うん。バレー部なんだけど。ボールが」
「えっ」

びっくりした声を出す。
ボールが顔に当たったことが分かったのだろうかと苦笑いをこぼす。

「及川さん、バレー部なんですか!!」
「え、う、うん」

前に乗り出だして聞いてくる。顔が近い。驚いた及川は少し後ろに反った。
目を輝かせる春加に面食らう。初めて会ったときもその次も、優しくしても無反応だったのにそこに食いついた!?

「なるほど。顔がよくてスポーツしてるとそれだけでモテますもんねえ」
「春加ちゃんスポーツマンはなんでも恰好良く見えるタイプ?」
「あー…そう、ですかね。そうかも?」
「お、おれ!レギュラーだから!」
「ええ!?そうなんですか!?」
「(また目キラキラしてる)」
「凄いですね、怪我するくらい一生懸命練習を」
「…あーそう!そうなんだよね」

話を合わせつつ小さく溜息を吐く。なーんか思い通りに行かないな春加ちゃん。

「バレー好きならマネージャーやれば?」


呆れつつ言うとその瞬間我に返ったように大人しくなる。前乗り気味だった姿勢を戻し目を反らす。

「あ、あー。マネージャーはいいです」
「ふーん?前の学校でマネージャーだったの?」
「私すぐ転校するって分かってたんで。部活はしてませんでした」
「確かに春加ちゃんの転入の時期面白いもんね」
「親の仕事の都合で。…はい、完了です!」

バンドエイドを貼って軽く叩いた。「いてっ」と言うと「これくらいだいじょぶですよ」と笑われる。
今度は及川が前乗りになり春加の腕を掴む。

「じゃあさ、今度部活見学来ない?」
「え?」
「あ、勧誘じゃなくてさ。俺たちのプレー見て欲しいなあって」
「!!いいんですか?」
「うん。よく見学来る女の子いるし」
「へえ、そうなんですね」
「オレがいるからね」
「ああ…なるほど」

呆れつつ笑う春加。
本当人気なんだ、及川さん。でもそれなら見学に行っても目立つことはないんだろう。

「じゃあ、今度見学させてください」


待てば海路の日和あり
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