及川中二、春加中一。




「では、ここにいる全員で今年の球技大会委員になります。みなさんには連絡・当日の誘導の仕事があるのでこれから何回か集まります。よろしくお願いします。一年生は初めてなのでまず種目の説明を…―――」

秋の球技大会の委員にされてしまった春加は肩を落とした。転校して、クラスの雰囲気は良かったが転校生あるあるの質問攻めにあい「スポーツが好き」と話題になったその日のHR。球技大会に向けての委員決めが行われた。そう。押し付けられたのである。
体動かすの好きだけどそれと委員は違くない!?抗議も虚しく「委員になることで新しい出会いもあるぞー」という担任の軽い発言により決定してしまった。
しかも当日誘導の仕事があるって。スポーツ出来ないんじゃ…?
委員長が説明をしている中教室を見渡す。一年から三年までいるがやはりほとんどが眠そうだ。三年生の列全員机に突っ伏して寝ている。そりゃ面倒だよなー来年こそ押し付けられないようにしようと心に決める。
ふと、視線を感じ見てみると二年生の列からこちらを見ている人がいた。一年の間でもイケメンだと話題になっている。及川徹。あの時お茶をくれた人だ。軽く頭を下げる。するとにこりと笑ってひらひらと手を振られた。
前の席に座っていた隣のクラスの女子がびくっとした。あ、ふたり揃って及川さん見てたのかな。なんか恥ずかしい。
それから春加は黒板に目を向けた。


「久しぶりー!ウチの学校だったんだ」
「はい。私も転入してから知りました。あの時はどうもありがとうございました」
「え、俺がいるって分かった?」
「及川さん目立ちますから」

そこは話しかけてくれれば良かったのに〜と笑う及川にいつも誰かと一緒ですしと返す。その中に一年が話しかけたらあきらかに及川を狙っている女子として見なされるだろう。転入早々そんなことにはなりたくない。まあいつかお礼を言う機会があったら。そんな気持ちだった。
今だって私の席まで来てくれたのだって前の子に驚いた顔をされた。いや、もしかしたら他の人たちもそうかも。先輩も話したそうにしてたし。

「人気ですね。私のクラスでもよく話題になってますよ」
「本当?うれしーな。あ、でもクラスじゃ扱い酷いんだよ!委員だって押し付けられたし」
「仲が良いってことじゃないですか。…私こそスポーツ好きだからって押し付けられましたけど」
「ま、春加ちゃんに再会できたからラッキーだったね」
「…あーありがとうございます」
「えっなにその反応!?」
「相変わらずだなあと」
「ええー俺センパイだよ?そういうこと言っちゃう?」

第一印象がああなんで、と言えば「…ああ」と苦笑いを浮かべる。

「春加ちゃんスポーツできる子なんだ」
「体動かすのは好きです」
「俺からしたら具合悪そうだったのが出会いだからなんか意外」
「及川さんは出来そうですけど」
「うん。俺は―――あ、そろそろ行かないとだべってるのバレちゃう!!」

ごめん!また今度!と慌てて走る及川。
忙しい人だなと春加は返事をする間もなかった及川さんをただ見送った。


ある日の初夏
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