目つきが鋭くていつも機嫌が悪い。そんな印象。
いつもにこにこヘラヘラしてる高尾と対象的だと思った。同じ中学だったらしいが、なぜあの二人が付き合っているんだろうか。

「あ、名無しさん!朝ぶり!もう帰んの?」
「授業終わったから」
「たまには応援に来てよ」
「アンタが毎日練習してるのは知ってる。私が行ったってなにも変わらないし、それなら勉強してるほうがいい」
「え〜?もう受験終わったぜ?高校生活エンジョイしないと!ね、真ちゃん!」
「俺にふるな」
「緑間なら分かるよね、無意味な時間を過ごすより私の好きなことしてたいっていう気持ち」
「無駄な時間だと?」
「真ちゃん、誤解すんなって。名無しさんが言いたいのは自分にとって無駄な時間ってことでバスケを否定してるわけじゃないから。この子言葉足らずでー」
「……もう帰る。じゃあね」

ぶすっとあからさまに怒った顔をしたあと返答を待たず歩き出す彼女。それを気にしてないのか「またね〜」と手を振る高尾。全く訳が分からない。あんなんでよく付き合ってるな。つーかあの二人見てるときだけは緑間が不憫に思えるわ。
「で、なに見てるんすかー?宮地センパイ!」
「……お前の趣味変わってんなと」
「ははーそうですか?名無しさんってけっこう面白いですよ。あと、可愛い。ま、俺だけが分かってるっていうのでもいいんですけど」

離れて見てたってこいつにはお見通し。気付かれてたことには驚かず素直に答えた。けど惚気られた。轢いてやる。
そんなことがあったのは、もう数週間は前だったろうか。


「あの、バスケ部の方ですよね」

午後練の休憩時間、気分転換に外に出ようとタオルだけ手に持ち歩いていたらいきなりぶっきらぼうに話しかけられた。
振り向きながらこの声は、と思えば予想通り。名無しさんチャンが目つき悪く立っていた。先輩を睨むなっつーの。

「なに?」
「これ、渡しておいて欲しいんですけど」
「…なにこれ」

差し出されたのはノート数冊。新品ではなく、使われてるとぱっと見で分かるようなものだった。渡しておいて欲しいっていうのは高尾のことだとすぐに分かった。だがなぜ俺に?つーかなんだよこれ。

「授業のノート?こういうの自分で渡しなよ。付き合ってるんでしょ」
「違います」

即答で思わず慌てる。え、違うって!こいつから見たら高尾はただのトモダチ的な!?
すると「私ルーズリーフ派なんで。授業はノートで受けてません」と返された。なんだそっちかよ…

「んじゃなに」
「相手校のデータです」
「は?」
「今度の大会で当たるかなーってところの」
「なんでアンタがそんなことしてんの?」
「学校忍び込むの趣味なんで」

真顔で言うなよ。予想外の答えに驚く。データにしても、忍び込むのが趣味っていうのも。ペラっとめくってみると学校の特色や選手のことまで書いてある。こんなもん数冊も作るなんて。

「彼氏のためにここまでやるかねフツー」
「何度も言わせないでください。私の趣味です」
「彼氏のバスケしてる姿見ないで自分の好きなことするって言ってたの、これ作るため?」

驚いた。なにより優先してるじゃんか。ムキになって隠してるところが高尾のためと言っているようなものだ。面白い。それに可愛いと言ってたのはこういうところか、と納得する。これは確かに、イジり甲斐ある。

「悪いですか」
「いや、健気だなーと」
「個人的趣味です」
「やっぱこれ高尾に渡せよ。あんたのために作ったわって」
「そんなこと出来るわけないでしょう!宮地センパイからかうのやめていただけますか」

赤くなって怒る名無しさんチャン。分かりやすすぎる。だいぶ高尾のことが好きとみた。
これはしばらく楽しくなりそうだ、と宮地はにやりと笑った。

「あれー名無しさんチャン今日は練習見るの?高尾のために情報収集行かなくていいの?」
「アイツのためなんかじゃないです!今日は…たまには良いかなって思っただけです。気分が乗っただけ」
「高尾ー、イイとこ見せてやれよ!」
「ラジャ!」
「だから!!!」
「(遊ばれてるのだよ…)」


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