珍しく部活帰りに先輩たちとマジバで夕飯、という話になり駅まで向かった。歩いていると途中で笠松は黄瀬の肩に手を置き「おい、あれ」と指差した。
その先には見知った人物が重そうな荷物を持って路線図を見上げていた。部活もやっていないというのにこんな時間までいることにも驚くが自分の鞄の他に大きい荷物を抱えている名無しさんは反対側の歩道から見ても目立った。

「黄瀬の新しい彼女じゃん」
「……新しいってなんスか」
「よくかわってるし」
「裏山」
「あんま言うなよ。今回はお熱なんだよなーうちのエースも」

羨望か叱咤の目で見てくるメンバーを「まあまあ」と宥めフォローする森山。しかし森山のフォローの仕方に「森山せんぱぁい」と半目になった。

「この前可愛い子じゃんって言ったら気に入ったのかって牽制されたし」
「ちょ、違!!」
「変な噂流れてっけど実際良い子だよなー」
「脱臼した一年治してくれたし」
「……元マネだからっしょ」

「お!照れてる!」「へー、お熱って本当なのか」と今度は茶化し始める先輩たちに慌てる。全然そんなんじゃないし!マジやめて!!
それに、と全く覚えのない話まで始める森山に顔が引き攣る。一体何がしたいんだか…

「……」
「行って来い」
「へ?」
「そんな気になるなら行けばいいだろ」
「さっきか(ら)あっちばっか見て(る)ぞ!」

ぽん、と黄瀬の肩をたたく森山。目が合うと爽やかな笑顔で微笑まれた。

「送るのも立派な彼氏のつとめだ」





「…なんスか、その荷物」
「え?」

振り返れば部活バッグをしょった黄瀬くんが立っていた。え、もうそんな時間!?慌てて時計を確認すると予想以上に遅くなっていて苦笑いが漏れた。

「文化祭で使う大道具運ばなくちゃいけなくて。私製作らしいから」
「…らしいって」
「まあ、表立ってやる仕事じゃないからいいんだけど」

本当は男子がやるはずの荷物の重いこの仕事はクラスの女子たちに決められていた。確かに重いが持てなくはないし司会とかじゃないだけいいか、と了承したのだ。

「黄瀬くんはいま帰り?」
「ここまだ学校の近くなんスけど」
「…あ、」
「あんたも学ばないっスね」

黄瀬くんだって口調が意地悪くなったるじゃん!慌てて「涼太」と呼べば今更と笑われた。なんて嫌な性格…!

「貸して」
「え?」
「運ぶ。その代わりこれ持って」

部活バッグを渡す代わりに荷物を取られる。名無しさんは慌てて拒否した。肩痛めちゃったらどうするの!と。

「…そんなヤワじゃねーし」
「そうじゃなくて。私の仕事だし」
「いいから。名無しさんの家の駅は?」
「でも、」
「…さっき先輩たちと名無しさん見つけたの。送ってかないとでしょ」

頑なな名無しさんに見せつけるためだという理由を述べるとようやく折れた。
名無しさんが駅を告げると黄瀬はえ、という顔をした。その駅は秀徳高校の近くだ。バスケで有名な高校。キセキの世代の緑間もそこに通っている。あえて神奈川の海常高校に来ているのか。…まあ名無しさんは元マネージャーで今はマネージャーじゃない。俺たちみたいにバスケで高校を選んだわけじゃないか、と納得する。

「んじゃ、行きますか」
「うん。…涼太、ありがとう」
「380円」
「へ?」
「途中まで定期使えるけど380円かかる」
「……往復代渡すよ」


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自分では夢子発見出来ないのが黄瀬。お金のこと言っちゃうのが黄瀬。気が利かない黄瀬が好きです。高尾なら全部クリア!(笑)
夢子は高尾が近くにいるから優しさで好印象与えるのは難しいのかなと。知らないうちに優しさの基準が高すぎてるかもしれない。


改めてください
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