「沢田綱吉、今日こそ戦ってもらうよ」
「結構です近寄らないでください」
「君の意見なんて聞かない」
「嫌です面倒です。こんなとこでトンファー出さないでくださいよ」

山本は部活、獄寺くんはダイナマイトの調達で久しぶりの一人での下校。嫌な人に捕まってしまった。トンファーを持ち、「風紀委員」と書かれた腕章をつけている人物といったら並中では知らない者はいない。知らなかったらモグリだ。泣く子も黙る戦い大好き雲雀さんだ。
ちょっとばかし家にいる赤ん坊に鍛えられたからって俺が雲雀さんに敵うわけがない。ほんとヤメテ。待ち伏せヤメテ。
じり、と一歩後ろに下がれば一歩距離を詰める雲雀さん。え、これ隙を見せたらやられるんじゃね?
冷や汗を流していると通りから誰かが近づいてきた。雲雀さんから視線を外せないため確認出来ないがどうやらこっちに向かっている。段々近づき、女の子だと分かる。直後、走って来た彼女は「やめなさーーーい!」とその勢いで雲雀さんに飛び蹴りを食らわす。

「…!?」

しかし雲雀さんも誰か来ていると分かっていたのかトンファーで蹴りをガードした。相手を確認して溜息をつく。
「……なにしに来たの。僕は忙しいんだ」
「草食動物狩りなんてやめなさい。一般人に迷惑かけない!」
「一般人ねぇ」
「一般人ですよ」
「……」
「一般人です」

訝しむ雲雀さんに念を押す。え、一般人でしょ俺って。それよりも…ちらっと彼女を見れば目が合う。俺と雲雀さんのやりとりをじっと見ていた彼女。はっとして慌てたように表情を崩した。飛び蹴りなんて想像もつかない優しい微笑み。

「はじめまして、綱吉くん。名無しさんです」
「…」
「あれ?どうしたの」
「急な登場に驚いてるんじゃないの。名無しさんはいつも突然だから」
「えーそうかな」
「ときめいた」
「「……は?」」

ハモったふたりはお互い顔を合わせ顔を顰めた。雲雀は特に嫌がっているように見える。しかし問題はそこではなかった。
綱吉を見れば名無しさんを見つめ固まっている。まるで視線を動かせないかのように。そして動いたかと思えばガシッと名無しさんの手をとった。

「一目惚れしました。俺とお付き合いしてください」
「え、えと…」
「どこから始めます?指輪交換からですか?今持ち合わせが大空のリングしかないですけどこれ多分高いしこれでよければ…」
「ちょ、ちょっと!そんなに簡単にリング手放すな!!多分高いとか言うなし!絶対高いけど!!」

慌てる名無しさんに綱吉は理解する。この人は雲雀さんの知り合いみたいだけど一般人じゃない。大空のリングのことを知っているなんて。もしかしてと思ったけど

「やっぱり運命の人ですか」
「どうしよう話通じないこの人」
「一発食らわせてあげれば?」
「なにを」
「得意の飛び蹴り」

顔が引きつる名無しさん。え、綱吉くん聞いてた子と違う…

「僕の事は怖いくせに名無しさんは平気なんだね」
「…雲雀さんとどういう関係なんです?」

急に目つきが冷たくなる。場合によったら容赦しませんよ、と鞄から死ぬ気丸を取り出す綱吉に雲雀は内心喜んだ。一度本気の草食動物と戦ってみたかった。しかし名無しさんの答えによって綱吉の闘志はみるみる萎んだ。

「残念ながらこの人と従姉なの」
「え、」
「…改めまして雲雀名無しさんです。恭弥から、というよりディーノさんからよく話を聞いてます」
「ひば…え!?雲雀!?」

雲雀には怯えているのは本当らしい。雲雀という名字を聞いた途端慌て出す。安心した。それなら私に深く関わろうとはしないはずだ。

「それって…将来雲雀さんと親戚に」
「やめろ」

前言撤回。全然諦めてないわ。


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