ソファーに寝そべり珍しく雑誌を手に動かないユーリ。私が遊びに来たっていうのに無視ですか。構ってくれないんですか。
むっとした名無しさんはユーリの手から雑誌を奪い取り後ろに投げた。予想していたのか床に落ちた雑誌を目で追うことも咎めることもせず。ようやく目が合った名無しさんは満足気に笑った。
「ねえ」
「ん?」
「お姫様抱っこして」
「…」
「膝まづいて。手にキスしてほしい」
「…俺が?」
「キャラじゃないよね。ぷぷっ」
「馬鹿にしてるだろ」
ジト目で見るユーリに「え〜?」ととぼける名無しさん。「お姫様だっこなんてお前のキャラでもないだろ」とツッコむ。
「ツインテールのお姫様だよ。知らない?」
「なにが言いたいんだ?」
「眠いからどいて、ユーリ」
ソファーから退かせるのが狙いか。けど面倒だと手を名無しさんに差し出す。ハテナを浮かべながらユーリの手を掴むとぐいっと自分の方へ引っ張り自分の上に乗せた。
「……これは望んでないんですけど?」
「俺も眠いから」
「眠いなんて私言ってないけど」
「眠くないの」
「……」
「図星」
「うっさい」
拗ねてそっぽを向くが退かないあたり嫌がってはないんだろう。こんな様子を見ていると悪戯心が生まれる。名無しさんの髪をすくいとりちゅ、と口付けしてみる。
びくっとした名無しさんは慌てて離れようとするがユーリははなさない。
「なに!?」
「してほしいって言うから」
「言ってない」
「膝まづいてキス」
「やーめーてー」
「自分で言ったよな」
「やーだー!」
ユーリの額をべちっと叩くと「いてっ」と声を出す。ユーリにひっついていた名無しさんは起き上がりユーリの上に座った。
「やった奴はやられる覚悟のあるやつだけってね」
「……名無しさんさん?」
「覚悟しなさい?ユーリ」
ユーリを見下ろし名無しさんはにっこり笑った。
ソファーでの戦い