出会いは十六歳の時だった。

「はじめまして征十郎くん」
「……おねえさんだれ」
「わたし?わたしはなまえ」
「なまえ?」
「そう、なまえ」

征十郎くんの目線に少しでも合うようにしゃがんで笑いかける。征十郎くんは警戒しているのか少し距離を取る。
私は背中に隠すように持っていたプレゼントの箱を前に差し出した。赤い包装紙と緑のリボン。クリスマスカラーだ。今の時期この配色が大人気で用意しようとした時にはこれしかなかった。まあ仕方ない。あと何日かしたらクリスマスなんだから。けど、今日はまだクリスマスじゃない。彼の、征十郎くんの誕生日だ。

「はい、プレゼント」
「…いいの?」
「もちろん」

そう言ったときの彼の顔は今でも忘れられない。だってまだ六歳なんだ。プレゼントを貰って嬉しくないはずがない。
初対面の私が彼にプレゼントを渡すことになったのは、私が彼の両親に頼まれたからである。共働きの征十郎くんの両親は私の両親と仲が良い。それも学生時代からの付き合いだとか。
息子の誕生日なのにどうしても抜けられない仕事が入ってしまったらしく、私に征十郎くんと過ごしてくれと頼まれたのだ。彼の両親には私もお世話になったし十六歳にもなればいくら子供の誕生日でも仕事が抜けられないこともあるって分かる。けど、それはやっぱり大人の事情だ。征十郎くんからしてみれば寂しくないわけない。私の両親もそうだった。
それで、まだ会ったこともない子だけど精一杯楽しく過ごして貰おうと思ったのだ。
赤司家には征十郎くんと私のふたり。

「誕生日おめでとう、征十郎くん!」

私はとびっきりの笑顔で彼を祝福した。

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