「え?」
なんだこの状況は。伊澄は冷や汗を感じた。なんだかおかしい。音也がおかしい。
いつものごとく林檎から逃げていた途中、急に腕を掴まれたかと思うとぐいっと引っ張られた。気が付けば伊澄の背中には壁。もたれるほどくっついている。目の前には音也。しかも左右は音也の腕が壁についていてある意味拘束されている。
いつものにこにこした音也じゃなく真面目な顔をしていて余計に焦る。告白された人とこんなことになっているのはまずくないか?と思うが逃げる方法を見つけられず音也を見つめ返す。
そんな伊澄に音也はようやく口を開いた。
「翔の部屋行ったんだって?」
「え?あ、うん」
「なにしてたの」
「なにって…別にいつもと変わらないけど」
話を濁したからか目を逸らしたからか。音也は少し怒った顔した。
「伊澄は男の部屋に行けちゃうんだ」
「…翔がピヨちゃん着せられて出てこなかったからだよ」
「で、ネコ着せられたの?」
「な、なんでそれを…!」
一気に顔に熱が走るのが分かる。なんか音也に知られるの恥ずかしいんですけど。
那月にハメられ伊澄まで着せられた動物シリーズ。翔とお互い誰にも言わないって約束したのに!
だが那月には何も言ってないことに気付いた。だが今更である。
「…ヤキモチ?」
「っ、」
そう呟くと音也は一瞬固まって「そうだよ!」と怒った。困らそうとしたつもりだったがそんなストレートに言われて伊澄は後悔する。そうだ。音也はいつも変化球ではなく直球勝負だ。
ぐっと近付かれ伊澄は本格的に焦る。なんとか抵抗しようと肩を押し返すがあまり効果がない。
「お、音也!期限まだだよ!」
「………分かってるよ」
随分と長い間のあと離れていく音也。みればいつもの笑みに戻っていて伊澄は安心する。
「リンちゃん行っちゃったよ」
「へ?」
ああそういえば、と林檎に追いかけられていたことを思い出す。え、じゃあさっきの全部助けようとしてくれて?…流石にそれはないか。
けど明らかに告白してから積極的なアピールをされてる気がする。何気に自分は恥ずかしがりやだと思っている伊澄は音也の対応に困ることが多くなった。前は自分で音也にひっついていたが今は逆だ。結局ひっついている訳だけど。
「今度俺にも見せてね」
「なにを?」
「ネコちゃん」
「…!」
一気に真っ赤になる伊澄を可愛い!と音也は伊澄の頭をかき回すように撫でる。目が合うとこっちが恥ずかしくなり目を逸らした。
なんで伊澄ってじっと見てくるんだろ…
けどそういうところも好きだと思う。一人惚気ている自分に苦笑いした。
ストロベリージャムのおしらせです