「諦めろよ翔。そのピヨちゃんだって、中々良いと思うぞ?」
「うっせえええええ!」

早乙女学園のSクラスである来栖翔は自分のベッドに潜り頭を抱えた。ピヨちゃんなんか着てもなんのメリットもない。デメリットだらけだ。

「翔ちゃんが出て来てくれないんですって那月くんにしょんぼりされちゃ断れないよな」
「つーかその喋りやめろ!」
「毛布にくるまりながら言われてもくぐもって聞こえない」
「聞こえないわけないだろ」
「つーか良い加減開き直れ!!!」

かばっと伊澄は毛布を引っ張る。そこには見目麗しいひよこ姿の翔。ちなみに伊澄も男装である。翔と那月の部屋、つまり男子寮内なため念の為というかこの格好で来た。既に男装を知ってる人も多いが。
といっても流石に部屋に行くのは気が引ける。翔じゃなかったら断ってただろう。

「似合ってるじゃない。中々男で似合う人いないよ。それを活かせれば十分キャラが立つのに」
「そういうのいらないから。俺達は仲間じゃないのかよ!?」

伊澄にすがる翔。ぎゅっと服を掴まれ上目遣いで見上げてくる。ああ、なんかその格好だとめちゃくちゃ可愛い。那月くんの気持ちも分からないでもないなーと密かに思っているとバン!と大きい音を立ててドアが開いた。

「翔ちゃん!やっと起きてくれたんですね」
「はっ、伊澄!今のは忘れろ!」
「えー?可愛かったよ涙目の翔ちゃん」
「忘れろおおおお」

頭を抱える翔とそれを可愛い可愛いと写真を撮る那月。毎日大変だろうなあと伊澄は苦笑いした。

「あ、そうそう伊澄ちゃん!」
「なに?」
「伊澄ちゃんにもあるんです。えっと…これ!ネコちゃん!」
「………え?」

時が止まる。そのために伊澄を呼んだらしい。那月はにっこりする。
え、ネコちゃんってそれピヨちゃんシリーズですか?私にもって着ろってことですか?
那月の後ろでしたり顏の翔が見えた。その顔ムカつく!

「サイズも翔ちゃんと背変わらないから大丈夫ですよね」
「2cm差あるから!変わらなくないから!」
「おい!2cmなんてすぐ抜かすからな!」
「おーおーやってみなさいよまだ生まれて間もないピヨちゃんが」
「待ってろよ一日中ごろごろするだけのネコが!」
「二人とも気に入ってくれたみたいで良かったですー」
「「気に入ってないから!!!」」


もしくは嫌がらせ
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