ヒュッ、とボールがゴールに入る音がする。バスケ独特の音。これでサッカーのが得意と言うんだから神様は才能を音也に与えすぎているんじゃないかと思う。
これを言えば人のこと言えない、と返ってくることは伊澄は頭にない。
そんな中同じく音也のシュートを見ていた翔は声をあげた。

「すげえ、3回連続じゃん」
「へへ!スポーツ好きだし」
「よし、俺も連続ゴール!」
「二人ともスポーツはいいけど焼けないようにね」

はしゃぐ音也と翔をコート脇で体育座りで眺める。もちろん日焼け対策はばっちりだ。日焼け止めはもちろんファンデーションにも予防効果のあるもの、そして日傘にサングラス。

「大丈夫だよ。ちゃんと手入れするから。ほら、濡れタオルもあるし」
「そ?」
「つーかその格好やめね?見てて暑苦しい」

翔ははあ、と溜息を吐いた。「そんな装備じゃ楽しくないだろ?」と。無理矢理連れて来たくせになんだその目は!!
日傘とサングラスを取り上げられ伊澄は立ち上がる。

「ああ!焼けるー!」
「だから大丈夫だって」
「伊澄もやろうよ」
「なら、俺も入れてもらえるかな」

どこからやって来たのかレンが肩をぐいと引き寄せにこやかに笑った。まるで密着しているのを自慢するように。だがそれがナチュラルにやられるものだからなんとも言えない。
対抗するように伊澄はにこやかにレンの手を退ける。

「あれ神宮寺くん。いたの」
「相変わらず冷たいね、きみは」

レンと話す時の伊澄は態度が少しそっけない。男装していても騙されなかったことを根に持っているのだ。すぐに見抜かれて面白くない。けどレンに見抜かれたのはなんだか納得出来るような気がしてそれが余計腹立つ原因でもある。
溜息を吐くと音也がボールを投げた。キャッチしたレンはボールをくるくると指一本でまわす。

「入っていいんだね?」
「いーよ。やろう」
「…音也?」

なんだか冷たい態度な気がして伊澄は首を傾げる。
それとは対象に隣のレンは「へえ」となにやら納得したようだった。

「レディはバスケ得意?」
「得意ではない」

レンからボールを受け取ると狙いを定め勢い良くシュートした。

「ぎゃっ」

ダン、ダン、ダン、

何度か弾んだあとコロコロと地面に転がる。勢い良く飛んだボールはゴールの縁にあたり伊澄の顔に直撃した。

「あはははははまじかよ!伊澄どんくせー!」
「違うし、ちょっと運動神経が駄目なだけだし」

何がそんなにおかしいのか指を差して笑う翔を顔をおさえながら睨んだ。そうだ。運動神経ないだけでどんくさくないし。

「天才も欠点があるわけか」
「神宮寺くんもうっさい!」

顔面直撃してすぐに音也は濡れタオルで伊澄の顔を冷やしてやる。
伊澄はされるがまま音也に任せた。この前から慌てた時の音也はワンコみたいに見える。じいっと音也を見つめるとそれを見ていたレンは笑う。

「普段完璧な子に欠点が発覚して可愛いと思わない男はいないよ。…なあ、イッキ」
「えっ」

急に話を振られた驚いたのか音也は慌てだす。返事に困ってるらしい音也にそっと助け船を出した。

「あたしは常に可愛いのよ」
「それもそうだ」
「なんだそれ」

伊澄とレンのやりとりに今まで笑い続けていた翔が冷静にツッコんだ。

「う、うん…可愛いと思うよ!」
「……ん?」
「その会話もう終わってるけど」
「ええ!そうなの!?」
「音也も時々どんくさいよな」
「そういうキャラで売り込めるからOK」


気に食わない
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