ピンポーン

「はい…って牡丹」
「かんしゅ!!」

ドアを開けてそこに立っていたのは、牡丹だった。

「お前、No.04に見つかってみろよ…殺されるぞ、俺が」
「…えー…」

露骨に落ち込む牡丹。…くそ、こんな顔されたらな…。

十中八九あいつのもとを抜け出してここに来てるのはわかってるんだが、無下に追い返すわけにもいかない。

「…で、何しに来たんだ」
「…ちょこ! ばれんたいん…?」
「…あーそれか。俺と作れってか?」
「うん! きれねんこに」
「そうかそうか」

うん可愛い。なんなんだこいつは。俺もチョコ欲しいとか言ったらくれそうだが…No.04に殺されるだろうな。この状況がもうヤバいもんな。

彼氏持ちの女子が他の男の家に上がりこむってな…

「とりあえず入れよ」
「はい! おじゃまします!」
「えらいな、そんな言葉覚えたのか」
「うん!」

牡丹の手には今しがた買って来たであろう板チョコやら何やらが入っていた。

「荷物貰っとくから、手洗って来い」
「はい!」

牡丹は走って洗面所へと消えて行った。

「はー…」

No.04に牡丹には甘いとか言っときながら、俺自身もあいつには甘々なのが笑える。

「ただいま!」
「ほら、髪まとめろ」
「…かんしゅ」

ブラシとゴムを手渡された。俺にやれと。

「…後ろ向け」
「ありがと!」
「………」

長く綺麗な髪にブラシを通す。すげぇ、さらさらで引っかからない。

「長いなー」
「うんー」

気持ち良さそうに顔を綻ばせる牡丹を見て、小動物に毛づくろいをしているような気分になった。

「よし出来た」
「ありがとうー!」

簡単に頭の上で団子を作ってやった。首元が見えると、また印象が違ってくるな。

「―――で、何作るんだ」
「…これー!」

袋から本を取り出した牡丹は、付箋のついたページを開いて指差した。

「ガトーショコラか」
「ん、がとーしょこら」
「よし、やるぞ」
「おー!」

ここまで来たら、やけだ。

―――

「よし、これで焼いたら、終わりだ…」
「わーい!」
「お前なんでそんなに元気なんだよ」

…疲れた。湯煎でチョコレートを溶かしている最中に牡丹がチョコレートをひっくり返して、それの片付けに体力を持って行かれた。

「はあ…」
「…ごめん、かんしゅ…」
「怪我無かったなら良いけどよ…」

焼いている間、束の間の休憩。

ソファに倒れこむと、その隣に牡丹がしゃがみ込んだ。控えめに頭を撫でられて、俺の心が持って行かれそうになる。耐えろ俺…!!

「No.04に黙って出てきたのか」
「こっそり!」
「…そうか」

今頃血相変えて探してるんだろうか。

「心配してるだろうな」
「…んー」
「まあ仕方ないか。出来たらはやく持って行ってやれよ」
「…うん!!」

―――

「………」

キルネンコの話に付き合った挙句、帰ってくると牡丹がいない。部屋に残されていたのは"ちょっと出かけてきます"といったような内容が書かれたメモだけだった。…辛うじて、そう読めた。

「………」

キルネンコヘ一つ舌打ちして、探しに行こう、と家を出てすぐに。

「きれねんこ!」
「…牡丹」

牡丹が飛び込んできたので、受け止めた。…どこ行ってたんだ。

「はい! つくった!!」
「…?」
「ばれんたいん! きれねんこだいすき!」
「!」

渡されたのは、可愛らしく包装された箱だった。とりあえず寒いので家に入り、改めて包みを開ける。

「がとーしょこらー」

わーと一人で手を叩く牡丹。賑やかだな。

「…作ったのか」
「うん!」
「そうか」

一切れを手に取り、口へと運ぶ。

「…美味いな」
「ほんと!」
「ああ」
「やったー!」

ぎゅうう、と抱き着かれて、抱き締め返した。膝の上に座らせて、ガトーショコラを牡丹の口元へ運ぶ。

「…うん! おいし!」

チョコのついた牡丹の唇に口付けて。

「…ありがとう」
「うん! どういたしましてー」

牡丹から看守の匂いがしたのも、その理由は大体予想がつく。

だが、今は何も言わないでおくことにした。

20150213















―――
アトガキ

ふっつーにキルネンコ出してしまってすみませんでした…

現代パロで、キレネンコを足止めできるのってキルネンコくらいかなって思ったんです

牡丹は現パロなら辛うじて字が書けるという設定です

ほとんど看守との絡みになってしまいました…
看守と牡丹のセット好きなんです…

キレ・牡丹→一緒に暮らしてる
看守→ご近所さん

この後看守は多分無事じゃないけど、ちょっとキレネンコがデレると面白いなーとか思ったんですが文章力が足りず。

ありがとうございました
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