「これはうわきです!」
「…はい」
「はだとはだがふれあう、きけんがあります!」
「こんな難しいの読めんのか」
「いまはそこじゃないでしょう!」
「…はい」
ぱん、と床に出された今週号のジャンプ。そして俺は今牡丹の目の前で正座をさせられている。
浮気、なんて牡丹から聞くとは思ってなかったな。俺は浮気はしない。
「要するに嫉妬か」
「やきもちじゃなーい!!」
ぽかぽかと正座した膝を殴られる。
嫉妬がやきもちに変換されてるあたり当たってるんだろう。意地になってるだけだ。
「きばせんでうわきされるなんて!! おもってなかった!! しょうとのばか! やおよろずさんうらやましい!!」
「心の声が出てる」
「わたしも、わたしもしょうとの…やくにっ、たちたかったもん!!」
「そうか」
太腿にぐりぐり頭を押し付けてくる牡丹。小さくなると感情表現が真っ直ぐで面白い。
少し嗚咽がもれはじめたので小さな牡丹の頭を撫でると、睨まれた。
「そ、そんなので…ゆるしたりしないからな!! わーん!!」
「悪かった、気を付ける」
「もうしない…?」
涙目で見上げられる。ロリコンと呼ばれてもいい。かわいい。
「それは約束出来ない」
「うぅ…っ」
「なあ、牡丹。俺が負けんのと浮気して勝つの、どっちが良い」
「わたしがてつだったうえで、しょうとのかんぜんしょうりがいい…」
「それは選択肢にない」
大体その小ささじゃあ危ないだけだ。
ぼろぼろと涙を零す牡丹を見て、手を伸ばしそうになるが堪える。まだだ。今じゃない。
「しょうとが、かつの…」
うわきして、とは言わないんだな。
「牡丹が一番好きだ」
「…いちばん?」
じと、と睨まれる。間違った。
「俺が好きなのは牡丹だけだ」
「しょうとー!」
両手を広げれば、飛び込んでくる小さい牡丹。
「しょうと、ちいさいきば! おんぶして!」
「…ちょっと待ってろ」
足が痺れた。牡丹の制裁である正座は効果抜群だった。
「あししびれた? なでようか?」
「今撫でたら明日のおやつ抜きだ」
「ええ!」
なでなきゃいいんだね! と言いながら突ついてきた。こいつは。
「しょうとへんなかおしてるおもしろい」
「怒るぞ」
「うわきのせいさいです」
「…返す言葉もねぇ」
―――
「よし、いいぞ」
「わーいおんぶだ!」
椅子の上からどさ、と背中に落ちて来る牡丹。牡丹の足を抱えて歩き出す。
「しょうととわたしならつよいとおもう!」
「そうだな」
「しょうとがこおらせて、わたしがせーちしてすけーとりんくにする!」
「怪我するぞ」
「じゃあいどうじゃなくて、こおらせてあしどめ!」
後ろで跳ねたり大声を出したり忙しそうだ。真剣に俺と組んで騎馬戦をしようとしているところについ笑みがもれる。
「騎馬で足を取られたら痛いだろうな」
「な!」
なんて他愛のない会話をしていたら、いつの間にか寝ていた。背中で眠る牡丹の、規則正しい寝息が聞こえる。
ベッドに寝かせて布団をかける。起きててもいいが、寝顔は格別だ。
ベッドの端に腰掛け、指通りのいい髪を撫でる。
「…浮気なんかしねぇよ」
気持ち良さそうに眠る牡丹に向かって、そう呟いた。
20150127
―――
アトガキ
牡丹のセリフ「せーち」とは整地のこと
焦凍が地面を凍らせて、それを牡丹が平らにならしてスケートリンクにすると言いたかったんです
連載番外と言いながら牡丹らしくないのは、牡丹が小さくなって頭の中も幼くなってるからですね、ということで許してください
焦凍も、小さい子ということで普段は言わないだろうなあみたいな言葉も使ってます(「怒るぞ」とか)
正直牡丹は本編ではここまでの事は出来ないと思うので小さくなってる間に焦凍を困らせまくればいいんですよ
27話読みました、2コマしか出てない焦凍かっこよかった
八百万さんと組むの想像はできてたんですけどね、ちょっとショックを受けた自分がいたのでここで発散
でも八百万さんかっこいいですよね、いつか本編の牡丹と絡ませてみたいです
キャラ崩壊甚だしい
拍手ありがとうございました
文章の糧にさせて頂きます