今日はキルネンコ様の友人の結婚式で、今私たちは礼服に着替えるところだった。
着替え終わった私は、キルネンコ様がシャツのボタンを留めていくのに見惚れていると、不意に彼が顔を上げて牡丹、と呼ぶ。
「ネクタイ、結んでくれるかな」
「へ、あ…」
私は焦った。
キルネンコ様はイタズラっぽく笑って、首を傾げる。
…しまった、確信犯だ。
私がネクタイの結び方なんて知らないことを、この人は知っている。
「ええと…」
目が泳いでいる事に気付いて顔を俯ける。
キルネンコ様は溜め息混じりに仕方ないなあ、と苦笑しながら私を目の前に立たせた。
「いい? 一度やってみるから」
「はい」
キルネンコ様は慣れた手つきで瞬く間にネクタイを首に在るべき形に結んだ。
…女として恥ずかしくなる。
またネクタイを解き、次は私に手渡す。
「やってみて」
「……」
とりあえずキルネンコ様の首にかけたはいいものの、それから先は流れるような動作だったので全く分からなかった。
「…わかりません」
正直にそう言うと、またクスクスと笑われた。
…絶対からかわれている。
「簡単だよ。この部分に巻いてから、通すだけ」
「…」
キルネンコ様のやったとおりにやってみる。
ネクタイの前に来る部分を細い方に一回巻きつけてから、輪に通して手前へ持ってくる。
…形には、なった。
「偉い偉い」
そう言って額にキスしてくれる。
「ありがとう御座います」
安心感から笑みがこぼれる。
キルネンコ様は笑って頭を撫でてくれた。
…これなら、無知でもいいかもなあと思う自分が居た。
20110313
お題元、てぃんがぁら
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アトガキ
名前変換少なかった
絵が上手かったら漫画にしてキルの指の綺麗さを押し出して描きたかったです。
結び方の説明が下手で申し訳ありません。
参考は「プレーンノット」というものです。
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