走っていた。全速力。

「――っはぁ…っ!!」

まだ、もっと速く走らないと。

冷たい空気が喉を切っているような、血の味が口の中に広がる。それでも走らなきゃ。

「はっ…はあっ…!!」

あの曲がり角を曲がって―――

「とっ、轟くん!!」

愛しい人の名前を叫んだ。

息も絶え絶えで、ちゃんと発音できたのか分からないけれど。

「…牡丹、」
「待ってよ…!! とど、ろきくん…!」

驚いた表情の轟くんは、私の「待って」という言葉にぎゅ、と唇を噛んだ。違うんだ、そんな顔をしてほしいんじゃない。

言え、叫べ。私。

「轟くん…! 大好き!! 大好きなの! だから…っ、置いてかなっ――い、で…」

唐突に引き寄せられて、力強く抱きしめられた。

ああ、夢にまで見た轟くんの逞しい腕だ。

「…置いていったりなんか、しねぇ」

苦しそうな表情の轟くんの声。

きっと私は、酷く彼を傷だらけにしてしまったんだろう。でも、それでも、轟くんと一緒に居たいと思ってしまった。

「嘘っ…! 振り返らなかったくせに!!」

熱い滴が頬を伝う感覚がした。ああ、もう止まらないや。

「大好き! ばか!」
「…悪い。馬鹿でも、何でもいい」

私の涙を袖で拭って、轟くんは優しく微笑んだ。

「好きだ、牡丹」

20150218 















―――
アトガキ
日付とアップ日が一致しないのは、紙に書いたものを打ち込む作業が中々進まないからです

なんとなく轟を追いかけてみたいと思いました
轟は黙っていなくなってしまうタイプかな、と思ったので

BGM、GReeeeNのBE FREEでした。懐かしい

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