04



ゆっくり目を開けると、見慣れない天井だった。

カーテンの隙間から明るい光が漏れていたので、ぼんやりとした頭でも朝だと気付いた。

『朝……あれ……?』

少しずつ頭が覚醒してく。
花子は目だけ周りを見回した。

『!?』

そして勢いよく起き上がると、部屋全体を見回した。

『え……まだ夢の中…なの?』

朝起きたら夢から覚めると思っていたので、まだ覚めない事に驚きが隠せないでいた。

『もしかして……本当にトリップしてきちゃったのかな……』

花子は頭を抱え、顔は青ざめていた。
そして頭をブンブンと振り、明日になればきっと目覚める…と無理矢理思い込ませた。

『まずは今日の予定を終わらせる事に集中しよう……』

母親になってから、割と物事は冷静に考えられるようになった。それが唯一の救いな事に苦笑いをして、準備を始めた。

そして暫くすると、ニファが迎えに来てくれ、街へ買い物に出かけた。

「あ、花子さん。兵長から伝言なんですが、買い物から帰ってきたら訓練するぞと言っていましたよ」
『え……嘘でしょ….』
「てことで、ちゃちゃっと買い物終わらせちゃいましょう!」
『え、ちょ!ニファ〜〜』

花子は涙目でニファを追った。

そして、生活に必要な物はほとんど揃い、時間を確認するともうお昼のようだった。
時間が経つのは早い。
せっかくなので、お昼を食べてから帰る事にした。

『ニファ、今日はせっかくのお休みだったのに付き合ってくれてありがとう。本当に助かったよ』
「いいえ!私も誰かと出かけるの久々だったので楽しかったです!」
『あ〜…この余韻をずっと楽しんでいたい…でも戻ったら訓練か〜……シンド…』
「でも兵長直々の訓練なんてレアですよ!」
『やっぱりそうなの?期待に応えられるといいな……』
「兵長の事ですから、見込みがあるから引き受けたんだと思いますよ」
『そうだといいんだけどね……』

花子はニファの励ましに苦笑いして答えた。
そしてお互い食べ終わり、ひと息してから戻った。


本部に戻り、荷物を抱えて廊下を歩いていると、エルヴィンの執務室からリヴァイが出てきた。

「帰ったか」
『あ、はい!荷物置いて着替えたら行きますね』
「ああ。ニファもご苦労だったな。その荷物よこせ。俺が運ぶ」
『あ、リヴァイ兵長!私持てますから!』
「両手塞がっててどう運ぶんだ」

花子は慌ててニファから荷物を受け取ろうとしたが、リヴァイの方が早かった。
そしてリヴァイは荷物を受け取ると、部屋へと歩き始めていた。
花子はニファにお礼を伝えて、慌ててリヴァイの後を追った。

『すみません、運ばせてしまって』
「別に構わん。初めての街は楽しめたか?」
『あ、はい!ニファとは気が合うのか、とても楽しかったです』

花子は買い物中の光景を思い出し、自然と笑顔になった。
それを見たリヴァイは「そうか」と答えた。

そして部屋の前に着くと、花子は鍵を出そうと思ったが、両手が塞がっていて取れないと分かると、先程までの笑顔とは逆になっていた。
それを理解したリヴァイはため息を吐いた。

「……鍵はどこだ」
『お尻のポケットの中です……』

花子はクルッと回り、リヴァイにお尻を向けた。

「……取るぞ」
『お願いします…』

さすがのリヴァイも、女性のお尻を触るのに気が引けるようだった。
一方、花子はリヴァイにお尻を触られてしまう、とドキドキしていた。

そしてリヴァイは鍵を取ると部屋を開け、荷物を置いてくれた。

『ありがとうございました〜助かりました』
「ああ。さっさと着替えろ。終わったら俺の部屋に来い」
『分かりました』

リヴァイは花子の部屋を出て行った。

『ふぅ……荷物整理は後にして……。さっき買ったシャツどこだっけかな…』

兵団服は支給だが、中に着るシャツは自由だったので何枚か購入しておいたのだ。

花子は昔、調査兵団のコスプレした事があったので、兵団服はすんなり着られた。

『(まさかコスプレがこんな時に役に立つとは…)』

花子は苦笑いをし、兵団服を着終えた。
そして、長い髪が邪魔にならないようまとめた。

『よしっ!!』

花子は鏡に映る自分を見つめ、気合いを入れるために、両手で頬をパチンと叩いた。


花子はリヴァイの部屋をノックし、返事が返ってきたのを確認してドアを開けた。

『兵団服の着方、これで合ってますか?』
「……初めてなくせによく着れたな」
『まぁ、なんとなくで着れました(コスプレの事は黙っておこう)』
「だが、全体的にベルトが緩い。もう少しきつく締めろ」
『え、これで緩いんですか!?』

これでも締めたつもりなんだけどな…と思いながらも、上から順番に締め直していった。

「次に立体機動装置を着けてみろ」

リヴァイは箱に入った立体機動装置を花子に渡した。
花子は受け取り箱を開けると、この前使っていた物より綺麗な物だった。

『これって、私がこの前使ってた物ですか?』
「ああ。傷が凄かったから整備しておいた」
『そうだったんですか……リヴァイ兵長も忙しいのに色々ありがとうございます』

花子は目線をリヴァイから立体機動装置に戻すも、手を動かす気配がないことにリヴァイは首を傾げた。

「どうした」
『さすがにこの付け方は分かりません……』
「最初からそう言え」
『いや、イケるかなと思ったんですけど無理でした』

兵団服のコスプレはした事があるが、立体機動装置付きのコスプレまではした事がなかった。

そしてリヴァイの補助の元、なんとか立体機動装置を着用出来た。
着用確認すると部屋を出て訓練場へと移動した。

「まずは立体機動の動きを見る。飛んでみろ」
『分かりました』

花子は動作を確認し、アンカーを木に刺し、ガスを噴射させ飛んだ。

花子はある程度飛び回り、リヴァイの元へ降りた。

『いかがでしょう』
「基本は悪くない。だが、ガスを出し過ぎだ。もう少し抑えろ」
『分かりました』
「次は俺に着いて飛べ。途中、巨人の模型があるからそれを削いでみろ。行くぞ」
『はい!』

リヴァイはあっという間に飛んでしまい、花子は必死に着いて行った。

「花子、削げ!」
『はい!!』

どんどん奥に進むと、巨人の模型が見えた。

『(リヴァイ兵長のように……イメージする…イメージする……。そしてガスを最小限に……)』

リヴァイの合図と共に、花子はガスを噴射しながら大きく飛び、勢いを付けて体を回転させ、模型の頸を削いだ。

『やった!』
「ほう……」

花子は模型の頸を削ぐと、ガッツポーズをした。
そして近くの木の枝に降り立つと、隣にリヴァイも降りて来た。

『削げましたよ!』
「悪くない」
『ホントに!?やったぁ!』
「花子よ、お前は本当に初心者か?この前から思っていたが……ここまで出来る奴は中々居ない」
『これで少しは調査兵団の力になりますか?』
「十分だろ。だが気は抜くな」
『!!…はい!!』

一瞬だが、リヴァイが微笑んだのが分かった。初めて直でみる笑顔にドキリとした。
花子は少し認めて貰えたのかもしれない、と嬉しくなり、花子も自然と笑顔で返した。

「明日からも訓練に励め」
『望む所です!』
「相変わらず威勢がいいな」
『威勢だけじゃなく、ちゃんと結果残しますからね!』

花子は強い眼差しでリヴァイを見上げた。
それを見たリヴァイは再び口元を緩めた。

「ほう、それは楽しみだな」

気づけば明るかった空も、いつの間にか日が傾いていた。
今日の半日訓練は終了となった。



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21.05.06

またあまり進まず……
コスプレした事はないんですが、実際と同じ着方なのかな?



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