大型の巨人が開けた穴を、巨人化したエレンによって穴は塞がれた。
そして、その穴から入ってきた巨人達を、壁外調査から戻ってきた調査兵団達が倒していった。
そのうちの1人、私も参戦し、何体か倒した。
全て倒し終わると、緊張の糸が切れ、今まで立体機動装置の重さは感じていなかったのに急に重さを感じ、膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んでしまった。
そして両手に握っていた刃はカタカタと音を立てて、手が震えているのに気付いた。
「オイ」
腰が抜けて立てないでいると背後から声をかけられた。
肩がビクッとなり、恐る恐る振り向くと、そこには花子の推しキャラである、リヴァイが立っていた。
『…はい……』
「どうした、腰でも抜かしたのか」
『……おっしゃる通りです……』
「さっきまでの威勢はどこにいった。ざまぁねぇな」
フンッと鼻で笑われ、冷たい目で見下ろされていた。
「とにかく、お前が何者なのか、後ほどたっぷり聞いてやる」
ついて来い、と言って顎で指示をされた。
『いや…あの…立てなくて……』
「チッ…さっさと立て、腰抜けヤロウ」
面倒くさそうな顔をしながら寄ってくると、花子の腕をグイッと持ち上げた。
「!?お前、なんだこの軽さは……。この軽さであんな動きが出来てたってのか」
立体機動装置を付けていたとしても、小柄な女性兵士でも鍛えている分それなりに重い。
それなのに軽々と持ち上がった事にリヴァイは目を見開いて驚いた。
『え、私の身長からして一応、標準の体重ですけど…』
「一体何キロなんだ、軽すぎる」
『じ…女性に体重聞くのは失礼です』
「つべこべ言わず行くぞ」
『わわっ!』
リヴァイはそう言うと、花子を肩に担いだ。
花子はお姫様抱っこがよかったな、と思いつつも連れて行ってくれるだけでありがたいと思うことにした。
それにしても、細マッチョ恐るべし…
そして花子はリヴァイに担がれながら、自分がここに来た事をどう説明しようか考えていた。
でも夢だし、そんなしっかり説明しなくてもいいんじゃないか?と思いながらも、本部に着くまで悩んでいた。
そしてエルヴィンがいる執務室に着くと、リヴァイは花子をドサっと荒く降ろした。
『い"っ…』
花子は痛みを感じたお尻をさすった。
もう少し優しく降ろしてくれても…
すると目の前が影になり見上げると、リヴァイが花子の足をまたぎ、仁王立ちしていた。
正直、怖い……
え、リヴァイ兵長ってこんな怖かったっけ?
花子はそう思い冷や汗をかきながら、リヴァイを見た。
「リヴァイ、いくらなんでも乱暴ではないか?」
「オイ、てめぇは空から落ちてきたよな?」
エルヴィンを無視し、リヴァイは花子を見下ろしながら質問を開始した。
「リヴァイ、順番というのがあるだろう。君、すまない…。まず最初に名前を教えてくれるだろうか?私はエルヴィン・スミスだ」
『あ、はい。私は佐藤花子です。あ、名前が花子です』
花子はリヴァイの足から顔を出すように、エルヴィンに目線を向けて応えた。
そして、またがれているリヴァイの足にぶつからないようにそっと足を抜いて、ゆっくり立ち上がり、お尻を軽く払った。
それでもリヴァイは足をどかそうとはしなかった。
『(なんか凄い警戒されてる……そりゃそうか。空から得体の知れない人物が落ちてくれば警戒するよね……でもそんなに睨まなくても…)』
身長差もほとんどないので、立ち上がると自然と目線がぶつかった。
あまりにも鋭い視線に耐えられず、花子は目線をすぐ逸らした。
「花子と言うのか。ありがとう。そして次に、花子、君は何故空から落ちてきたんだ?」
リヴァイとの距離が近い花子は一歩横にずれて、エルヴィンの顔が見える位置に移動した。
リヴァイは変わらず鋭い視線を送っていた。
『えっと……はい、私も何故空から落ちてきたのか分からないんです……』
花子はリヴァイの鋭い視線を感じながらも、エルヴィンの質問に答えた。
「分からねぇだと?」
『ヒィッ!!』
ずっと黙っていたリヴァイがさらに鋭い目つきで話してくるので、花子は反射的にビクッと反応してしまった。
その怒った顔も素敵ですけど、やっぱり怖い…
『えっと……部屋で寝ていたはずなんですけど、目が覚めたら空から落ちてました…』
「あ?」
『ほ、ホントなんですよ〜』
あまりにも怖くて、涙目になりながら花子は反論した。
「リヴァイ、君は少し落ち着きなさい」
「チッ…」
リヴァイは舌打ちをすると、腕を組んで壁に寄りかかった。
「寝ていた?どこにだ?そもそもこの兵団内で君の名前は聞いた事がないのだが」
『あの……信じて貰えるかわかりませんが……』
「?」
花子はどうせ夢かもしれないけど、もうこれ以上は誤魔化せないと判断し、本当の事をちゃんと話そうと決意し、真剣な眼差しでエルヴィンを見た。
『……私、多分……異世界から来ました』
「「!?」」
案の定、エルヴィンとリヴァイは大きく目を見開いて驚いていた。
「異世界だと…!?そんな話聞いた事ねぇが…」
「ああ……今までそんな事例はない…」
リヴァイ、エルヴィンは驚きを隠せないでいた。
「エルヴィン、こいつが落ちてくる所を色んな奴に見られている。もし、本当に異世界から来たとなれば余計に憲兵団が黙ってねぇぞ」
「そうだな。何より君の動きはリヴァイに劣らない程の素晴らしさだった。2人で戦えばこの世から巨人を無くす事が出来るかもしれない。そうなれば余計に憲兵団には渡したくないな」
『(そっか、問題事は憲兵団に任せているんだっけ。異世界から来たなんて知られたら、実験やら何やらされて最終的には殺されるかもしれないんだよね…。まぁ、その前に夢から覚めると思うけど)』
リヴァイとエルヴィンが話している内容に花子はすぐに理解できた。
「ところで花子、あの動きと立体機動装置の使い方はどこで学んだんだ?」
『学んでいません。私の世界にはそんな装置もありませんし…私も自分の体じゃないみたいな気がして…。なんというか、こんなふうに動きたい、って念じたら思った通りに動けたというか……』
「ほう…それはもう才能かもしれんな」
エルヴィンはリヴァイと同等の逸材に、目を輝かせていた。
「花子よ、立体機動装置と兵団服はどこから盗んだんだ?」
リヴァイに初めて名前で呼ばれ、不覚にもドキッとしてしまった。
『ぬ、盗んでません!!目が覚めたら何故かこの格好でした……』
「お前、分からねぇばかりだな」
『そんな事言われましても……』
「では、これから監視という意味でも、花子をリヴァイの補佐として務めてもらう。上には私が上手く説明しておこう。リヴァイ、頼んだ」
エルヴィンはそう花子に伝えると、リヴァイは「了解した」と渋々了承していた。
『え……じゃあ、私は憲兵団送りにならないって事ですか?』
「ああ。君が私達の戦力となってくれるならな」
『私なんかが、いいんですか?』
花子は困ったような顔をすると、エルヴィンが「勿論だ」と言って優しく微笑んだ。
トントンと上手く話が進むのは不安だったが、処分されないと分かりホッとした。
「では、リヴァイ、よろしく頼むよ。確か君の隣の部屋が空いていたはずだ。案内も頼む」
「ああ。行くぞ、花子」
『あ、はい。エルヴィン団長、ありがとうございました!』
「ああ。これからよろしく頼むよ花子」
リヴァイの後を着いて行き、部屋を出る前にエルヴィンにお礼を伝えると、エルヴィンは微笑んでいた。
団長室から出て少し歩くと、エルヴィンが言っていた空き部屋に着いたようだ。
「お前の部屋はここだ。俺の執務室はこの隣、突き当たりが俺の部屋だ。」
リヴァイが指で部屋の位置を教えてくれた。
私の部屋は、リヴァイ兵長と執務室の間のようだ。
隣の部屋なんていいのでしょうか。
隣にいると思うだけで萌え死にそうなのですが…
「何かあったらすぐ呼べ」
『わかりました』
「さっそくだが、早急に取りかかるぞ」
『え、何にですか?』
「決まってるだろ、掃除だ。こんな薄汚ねぇ部屋で過ごすつもりか」
『……ごもっともです』
ガチャリと私の部屋を開けた。
確かに部屋を見ると、しばらく使わていなかったのかホコリが溜まって白くなっていた。
リヴァイ兵長は、これは掃除しがいがあるな、なんてボソっと言っていた。
ほらよ、と白い布とはたきを渡された。
リヴァイを見るといつの間にか、布を頭と口元に装着し、窓を開けていた。
『(どこから出したの……てか早っ…)』
そう思いながら、花子も準備をし、周りをはたきで叩き始めた。
何か話したいけど、口より手を動かせと言われそうだなと思い、花子は掃除に集中した。
花子はハンディモップ、掃除機があればあっという間なのにな〜…と思いながら掃除をしていると、リヴァイに「花子」と声をかけられた。
『あ、はい』
掃除中の手を止め『なんでしょうか?』と付け加え、リヴァイに目を向けると、リヴァイは、背中を向けたまま、手を止める事なく話し始めた。
「何故この世界に来た」
突然の質問に花子は固まった。
『……私にも…分かりません(そもそも夢だし?)』
「そうか。早く家族の元に帰りてぇんじゃねぇのか」
『そう……ですね…(夢だから起きたら会えると思うけど)』
これは夢だ。明日朝、目が覚めたら現実世界。だから夢の間だけでもこの世界を楽しみたい。何より、大好きなリヴァイ兵長と一緒に居れるんだから。
あれ……?
でも寝落ちする前になんか女の子の声が聞こえた気がしたような…?
気のせいだったかな?
まぁ、いっか、と考える事をやめた。
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21.04.16
あまり進まず。
押しが目の前にいてもキャッキャならないのは、アラサーだからってことで…笑