私には高校から仲良しの友達がいる。
その子の名前は杏奈。
アニメが大好きで、私も杏奈の影響でアニメ好きになった。
私たちの会話の9割はアニメの話だ。
お互い結婚もして、子どもも出来て、母親となった今でも連絡は頻繁に取り合っている仲だ。
予定が合えば、家に呼んだり呼ばれたりで今でもアニメの話で盛り上がるのだ。
今日は久しぶりに家に遊びに来ることになった。
ピンポーーン
「私〜!」
『は〜い、今出るね!』
花子はインターホンに出て杏奈の顔を確認すると玄関の鍵を開けた。
「『久しぶり〜!!』」
さすが腐れ縁、見事にハモった。
『いらっしゃい!どうぞ、あがって〜』
「お邪魔しまーす!」
杏奈も同じ一児の母だ。
そして杏奈も狙ったかのように、私の子どもと同級生となる子を産んだ。
お互い、今一歳を過ぎた男の子のママとなった。
子ども見ないうちに大きくなったね〜!
と、お互い子どもの話をしながらリビングへ向かった。
「何飲む?」
「決まってんでしょ」
私がそう聞くと、杏奈はニヤリと笑い、
「『リヴァイ兵長の好きな紅茶』」
と、またハモった。
そう。最近2人で再度どハマりした進撃の巨人の話だ。アニメのファイナルシーズンが始まったのをキッカケに再熱したのだ。
進撃の巨人にハマったのは、連載開始と同時の大学卒業をして社会人になってからだ。勿論、杏奈に勧められてどハマりした。あれから10年も経っている。その10年の間にお互い結婚、出産があったと思うと早いものだ。
『杏奈は今でも団長推しなの?』
「あったりまえよ〜!死んでしまっても永遠の推しよ。そういう花子は変わらずリヴァイなの?」
『もちのろん』
お互いニヤニヤしながら巨人の話で盛り上がる。
『最近さー、子育てでいっぱいいっぱいになるとさー……現実逃避したくなって夢小説読み始めちゃったんだよねー』
「分かる分かる。巨人と戦うのは嫌だけどトリップしてみたいよね〜!」
『巨人にハマりだした頃、よくコスプレしたよね〜笑』
「懐かしい〜〜!今はもう出来ないわ 笑」
『まだ持ってるの?』
「あー、どうだったかなぁ…実家にはもしかしたらあるかも 笑」
『久々に着てみたいな〜』
「マジで言ってるの?もう産後太りで無理だわ〜」
杏奈はあの頃の体型とは別人だから無理だ、とキッパリ言った。
「でも花子は逆に痩せたね、羨ましいんだけど」
『なんか母乳あげてたら自然と。あと、夫が体型にうるさいから、時々ジム行ってるからさ…』
「あー、花子の旦那さん言いそ〜。結構厳しいよね」
『太ってるのは生活が乱れてる証拠。30歳過ぎると痩せにくいから運動しとけ、って』
花子は苦笑いしながら答えた。
『私はさ…お見合い結婚だから、好きな人と結婚出来てたらこの生活も楽しかったのかな、なんて時々思うんだよね』
「ん〜…好き同士で結婚しても、離婚したーい!って言ってる友達もいるから、人それぞれじゃないかな?」
杏奈は苦笑いしながら、淹れたての紅茶を口にした。
『このまま私が消えたらどう思うのかな、とか思っちゃうんだよね』
花子は少しうつむくと、自分も紅茶を口にした。
「旦那さん、協力してくれないの?」
『なんて言うか……妊娠中はそれなりに優しかったんだけど、跡継ぎが出来て安心したのか、もう放っておかれてる。側から見たら、優しい旦那さんで専業主婦でいられて子どもも居て。理想の家庭なんだろうけど、なんだろうね。私が我が儘すぎるのかな』
花子は顔を上げて困ったように笑い返した。
「そんなことない。人間は欲の塊だし。私も思うよ。なんで夫婦の子どもなのに私1人で育児してるのかな、って。このまま全部投げ出して1人で自由に生きたいなって思う事あるよ」
『え、杏奈も?』
「そうだよー。結婚ってゴールだと思ってたけど、第二の人生のスタートラインなんだなって思った。これが理想と現実かー…って思った」
杏奈も困ったように笑って言っていた。
『そっか…なんか安心した』
「周りは楽しそうに子育てしてるのを見てると、なんで自分だけこんな孤独なんだろって思うよね」
『うんうん、分かる…!』
2人は珍しく、アニメ以外の事で盛り上がった。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていき、外はもう赤く染まっていた。
「もうこんな時間かー。そろそろ帰らないと…」
『本当だ。あ〜話し足りない!』
「また近々会おうよ!」
『うん、また話そ!!』
「んじゃまたね!」
『うん、またね!』
そう言って杏奈は、すっかり眠ってしまった子どもを抱き抱えて玄関を出て行った。
『は〜…あっという間だったなぁ…。ご飯用意しなきゃ…』
花子は名残惜しそうにしばらく玄関を見つめた後、夕飯の準備に取り掛かった。
そしてご飯を食べて、お風呂に入り、子どもを寝室に連れて行き、背中をトントンとしながら寝かしつけた。
ハッと気付くと、寝落ちしていた事に気づいた。
『また寝落ちしちゃった…』
何時だろうと、重たい瞼をゆっくり開け、時計を見ると22時を回っていた。
『寝過ぎた…このまま歯磨きして寝よ…』
重い腰を上げて、まずリビングへ向かうが、夫はまだ帰ってきてなかった。
まぁ、いつもの事か。と思いながら洗面所へ向かった。
歯磨きを終えて、寝室のベットに入った。
そしてベットに横になりながら、リヴァイの夢小説の続きを読んだ。
『いいなぁ…私もこの世界に行けたらなぁ…。リヴァイ兵長に会いたいなぁ…』
全てを投げ出して1人になれたら、どれだけ幸せなんだろうか、と。
好きな人と一緒にいられるって、どんな気持ちなのだろうか…
『もう…疲れたよ、私』
そっとスマホの電源を消し、襲ってきた眠気に従うように、そっと瞼を閉じた。
遠くで声が聞こえた気がしたが、そこで意識が途切れた。
「たすけて…」
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21.04.08
ついに始めてしまいました…!
衝動で始めたので、巨人の細かい設定は全然知らないので、あれ?という所が出てくるかもしれませんが、気にせず読んで下さると嬉しいです(^^;)