09



リヴァイ班のメンバーには、先に旧調査兵団本部に戻るよう伝え、リヴァイと花子はエルヴィンの指示通り、エルヴィンの執務室へと向かった。

そしてエルヴィンの執務室に入ると、ハンジ、ミケ、ナナバが既に待っていた。
ハンジは案の定、ソニーとビーンが殺されたのがショックで憔悴していた。

しばらくするとエルヴィンが入ってきた。

「早速だが、今回の事件の犯人を捕まえるべく作戦を立てる」

作戦内容は漫画の展開通りだった。
この通りに進めば、多くの命が奪われる。
絶対、そんな事させない……

「この作戦に意見がある人はいるか?」
『エルヴィン団長』
「花子?なんだ」

思ってもいなかった人物にエルヴィンは少し驚いた様子だった。

『私は予定通り、リヴァイ班と行動します。もし、リヴァイ班が巨人に捕まりそうになっても周りには援護など一切しないよう伝えて下さい』
「花子、お前は何を言い出す。そしたら俺たちは奴に捕まっちまうだろ」

花子の発言にリヴァイが返すが、花子はリヴァイを横目でチラッと見ると再びエルヴィンに目を向けた。

『それを阻止するため、私が対応します。ギリギリまで引き寄せて、限界まで来たら私が動きます。この作戦では沢山の命が失われる可能性は大です。被害を少なくする為には何人もの命より、1人の命を掛けた方がいいと思います』
「花子は何を言ってるんだい?いくらリヴァイと同等の力があるとしても、君1人で出来るとでも!?」

じっと聞いていたハンジは慌てて花子を止めた。

『はい、私なら出来ます。やってみせます』
「その確証はどこにある」

リヴァイは険しい顔をして花子を睨む。

『……ありません』
「おい花子、いい加減に…」
「花子、君の命を背負ってまでやる事なのか?」

リヴァイが言い切る前に、ずっとやり取りを見ていたエルヴィンが口を開いた。

『……はい。この結果で私がこの世界に来た意味が分かる気がするんです。そして何より、この異常な力は何の為にあるのか、試してみたいんです』

花子は自分の手の平に目を移した。

「もし失敗したら?」
『それは……。それは、私の命がそれまでの物だったと言う事です』

花子は開いていた手を強く握り、エルヴィンに強い意志の目で見た。
隣にいたリヴァイは、その強い意志の眼差しを見て、大きく目を見開いた。

「……分かった。君を信じよう」
『ありがとうございます』
「エルヴィン!!」

エルヴィンを止めようと、ハンジが大きな声を発した。

「私は反対だよ!!こんな逸材を一瞬で無くしたくない!!」
「俺も同感だ」
「私も。花子の負担が多すぎるよ」

ハンジに続き、ミケとナナバも同意した。
ハンジは「リヴァイも何か言ってやってよ!!」と、ずっと黙っているリヴァイに目を向けた。

「エルヴィンが了承したなら従うまでだ」
『ハンジさん、ご心配ありがとうございます。私が死ななければいい話です。大丈夫です。私は簡単に死にませんよ』

花子は微笑んで伝えると、ハンジは腑に落ちない表情で花子を見る事しか出来なかった。

「では、準備でき次第、作戦を決行する」
「「「「『了解』」」」」

作戦会議が終わり、それぞれ執務室を後にした。
部屋を出ると、ハンジに思い切り肩を掴まれ、強制的に体を向かされた。

「花子は本当にこれでいいの?」
『はい。これが最策と思ってます』
「花子、お前はどこからそんな自信が湧いてくる」

ハンジに続き、ミケも問う。

『なんとなくです』

ニッと笑う花子を見て、4人はこれ以上言ってもダメだと思った。

『それに……』
「あ?」

花子は口元に笑いを浮かべ、リヴァイをチラッと見た。

『何かあれば、リヴァイ兵長が何とかしてくれると思ってるので』
「オイ……俺を顎で使うとはいい度胸だな……」
『半分冗談です。なんか……リヴァイ兵長が居ると、安心して戦えるんです』
「もう何を言ってもダメなんだろうね……。花子、無理だけはしないでね」

ハンジの悲しそうな顔を見て、花子は申し訳なさそうな顔でハンジを見上げた。

『そこは重々承知です』

そしてハンジ、ミケとナナバはそれぞれの執務室へ戻り、花子とリヴァイは再び旧調査兵団本部へと向かうため、馬を取りに厩舎へと足を運んだ。

花子はリヴァイの後ろを着いて行くと、リヴァイは突然止まり、振り向いた。

「花子」
『はい』
「今夜俺の部屋へ来い。話がある」
『……分かり…ました』

花子は、さっきの作戦の事で説教かな、と顔を曇らせ、ワントーン低い声で返事をした。





作戦会議終了後、リヴァイと花子は旧調査兵団本部へと向かった。
向かう途中、終始無言だった事に、リヴァイが相当怒っているのだと読み取れ、花子の表情はますます青白くなっていった。

そして約束通り、花子は就寝前にリヴァイの部屋へと向かった。
花子は深呼吸をして、静かにノックをするとガチャっとドアが開いた。

「入れ」
『失礼…します……』

リヴァイがドアを閉めると同時に鋭い目と目が合うと、花子はビクッと肩を震わせた。

「座れ」

リヴァイはベットに座り、向かい合うよう花子は椅子に座った。

「俺が言いてぇ事は分かるか?」
『……今回の作戦の件ですよね?』
「それもある」
『……?』

それじゃないとなると、なんだろう、と花子は頭に?を浮かべた。

「お前は何を知っている」
『何……とは?』
「最初会った時からおかしいとは思っていた。俺の名前も知っていた。被験体が殺された時も様子がおかしかった。そして今日の作戦会議で、お前は大勢の命を失うと言ったな。なんでそんな事が分かる」
『(さすが兵長、するどい……)』

さすがにこれ以上は隠し通せなさそうだなと、花子はリヴァイの憶測に苦笑いをした。

「お前が犯人っていうオチじゃねぇだろうな?」
『そ、それは違います!』
「んじゃ何だ」
『それは……この作戦が成功したらお話します』
「だめだ、今言え。上官命令だ」
『……ここで権力を使うなんてズルイです』
「いいから言え」
『確証がないので言えません』

花子は言わない事を貫く姿勢にリヴァイは舌打ちをし、苛立ちを覚えた。
リヴァイは立ち上がると、花子の胸倉を強く掴んだ。

「言わねぇとどうなるか分かってんだろうな」
『……すぐ力で解決しようとするのは、兵長の悪い癖ですね』

花子は無表情のまま、先程より冷たい目でリヴァイを見た。その目に余計苛立つリヴァイは、掴んでいるシャツをより力を入れた。

「花子、いい加減にしろよ……」
『帰ってきたら必ずお話するので、それまで待ってもらえませんか?お願いします』
「お前が生きて帰ってこれる保証はねぇだろ。お前が死んじまったらこの話は聞けなくなっちまうだろうが」
『私は死にません』
「チッ……またそれか。もういい。部屋へ戻れ」

リヴァイはこれ以上拉致が開かないと思い、仕方なく話を終えた。
舌打ちと同時に、掴んでいたシャツを投げやりに離した。

花子は目線を下げ、リヴァイの顔を見る事なく小さな声で『失礼しました』と部屋を出て行った。
その姿にリヴァイは再び舌打ちをした。

そして、予定していた30日後の壁外調査に加えて、巨人捕獲作戦の決行が決まった。
巨人捕獲作戦については、一部の兵士達にしか通達されていない。


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21.08.10

悲劇ヒロインになりつつある…?
それだけは回避したい……



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