08



夕飯を終え、紅茶を飲みながら食後の団欒タイムとなった。

エルドが1ヶ月後の壁外遠征について話題を上げた。

「我々の待機命令はあと数日続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えていると聞いた。それも今期卒業の新兵を早々に混えると聞いた」
「エルド……そりゃ本当か?ずいぶん急な話じゃないか?ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵にはこえただろうによ」
「ガキ供はすっかり腰を抜かしただろうな」
「本当ですか?兵長?」

エルドから壁外遠征の話が出ると、グンタは知らなかったようで驚いており、オルオは相変わらず先輩ヅラしている。
ペトラも初耳だったのか、リヴァイに確認を取った。

「作戦立案は俺の担当じゃない。ヤツのことだ……俺たちよりずっと多くの事を考えているだろう」
「確かに……これまでとは状況が異なりますからね……多大な犠牲を払って進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば、突然全く別の希望が降って湧いてきた」

エルドが話し終わると、皆は一斉にエレンと花子を見た。
花子は何故自分も目を向けられているのか、頭に?を浮かべていた。

「花子さん、貴女もです。リヴァイ兵長と同様の力がある貴女がいれば、マリア奪還もより実現可能です」
「そうですよ!花子さんは我々の希望なんです!!」

エルドに続き、ペトラはキラキラした目で花子を見た。

『え……いや、私の力は全然だよ……でもそう思ってもらえてるなら、ここに来てよかった』

花子は目線を外し、苦笑いをして返した。
花子は自分の実力じゃなく、何の意味で与えられた力なのか分からないも、皆の力となって評価される事にいつも複雑な気持ちだった。

「そういえば花子さんはなんで空から降って来たんですか?そもそも調査兵団で見ない顔でしたけど……」

グンタが素朴な疑問をぶつけられ、花子はギクッと肩を鳴らした。

『あー……それは……』
「花子は調査兵団内の事務方だったが、緊急事態の為に参戦していた。異端の実力者でエルヴィンが引き抜いたってわけだ。空からってのは、ガスを思いっきり噴かしたんだろう」
「なるほど!」

リヴァイのフォローに花子は驚くも、グンタを始め、皆も納得してくれた様子でホッと胸を撫で下ろした。

「ところで……未だに信じられないんだが……“巨人になる”っていうのはどういう事なんだ、エレン?」
「その時の記憶は定かではないんですが……とにかく無我夢中で……でもきっかけになるのは自傷行為です。こうやって手を……」

エルドもふとした疑問をエレンに問うと、エレンは自分の手を噛みつく仕草をした。

「お前らも知っているだろ……報告書以上の話は聞き出せねぇよ……まぁ、あいつは黙っていないだろうが。ヘタにいじくり回されて死ぬかもなお前……エレンよ」
「え…?あいつとは……?」

リヴァイが言う "あいつ" に疑問を持つエレンと同時に、タイミングを見計ったかのように入り口のドアが開いた。

「こんばんはー!リヴァイ班の皆さん。お城の住み心地はどうかな?」
「あいつだ」
「ハンジ分隊長」

あいつ=ハンジ と分かったエレンは驚いた。
ハンジがこちらに向かって来ると、余っている椅子が無い為、花子は立ち上がりハンジに椅子を譲った。

『ハンジさん、こちらどうぞ』
「ありがとう花子。私は今、街で捕らえた2体の巨人の生体調査を担当しているんだけど、明日の実験にはエレンにも協力してもらいたい。その許可をもらいにきた」

ハンジは花子にお礼を言うと、エレンに体を向けた。

「実験……ですか?オレが何を……?」
「それはもう……最高に滾るヤツをだよ!」
「あの……許可については自分では下せません。自分の権限を持っているのは自分ではないので」

エレンがチラッとリヴァイに目を向ける様子を見たハンジは、リヴァイに権限があると理解した。

「リヴァイ?明日のエレンの予定は?」
「……庭の掃除だ」
「なら良かった決定!!」
「あ……はい……。しかし巨人の実験とはどういうものですか?」
「!」
「(オイ!やめろ……聞くな!)」
「?」

ハンジの巨人話のスイッチが入ると大変な事になるのを、皆は知っていた。
エレンの隣に居たオルオが、肘で突き小声で忠告をするが、時はすでに遅し。

「あぁ…やっぱり聞きたそうな顔してると思った……。そんなに聞きたかったのか……しょうがないな。聞かせてあげないとね。今回捕まえた巨人達について」

完全にスイッチが入ってしまったハンジを見て皆は状況を察し、エレン以外立ち上がり、部屋から出て行った。

そして花子も部屋から出ようとしたところ、ハンジに腕を掴まれた。

「あ!花子ももちろん聞きたいよね!!」
『っ!!私はもう知っているので大丈夫ですよ!』
「え!?何それ!?花子の知ってる情報も聞きたい!!」

にっこり花子がハンジに返すと、逆効果だったようで余計に興味を持たれてしまい、掴まれている腕に力が込められた。

『それはまた今度ゆっくりお話ししますから!ほら、エレンを待たせては可愛そうですから!』

花子はエレンを助けてあげられない事に『エレン、ごめん』とジェスチャーで謝るが、エレンは何のことだろう、と首を傾げていた。

「そうだね、今はエレンに聞かせてあげないとだね!」

ハンジはあっさり納得してくれ、腕を解放してくれた。
そして、花子も無事に部屋から出る事ができ、ハンジの長話徹夜コースを回避できた事にホッとため息を吐いた。

「花子」
『ふぇあえあ!?』

扉を閉めて部屋へ向かおうと、回れ右をしようとした所、後から声をかけられ驚いた。
振り向くと、壁に寄りかかって腕を組んでいるリヴァイが居た。

「何ちゅう声出してんだ」
『兵長!おっ…驚かさないで下さいよ!』
「そっちが勝手に驚いたんだろうが」
『(クッ……今度絶対仕返ししてやろ……)』

花子はムッとした顔でリヴァイを見た。

「お前、そのうちボロが出ないよう気をつけろよ」
『あ、さっきはフォローありがとうございました。お礼言いに行こうと思ってたんです。と言うか、思ってた以上に見られてたんですね』

花子は苦笑いしながら頬を掻いた。

「あんな空から降ってくりゃ、誰だって不思議に思う」
『……憲兵団にバレるのも……時間の問題でしょうか……』
「それは問題ない。エルヴィンが上手くやる」
『団長には頭が上がりませんね……』
「てなわけで、お前は調査兵団の事務員だった事にしておけ。いいな」
『はい、分かりました』

壁に寄りかかっていたリヴァイは、体勢を戻し、花子と向き合った。

「それと……」
『?』
「エルヴィンの命令だったとしても俺は、花子の実力を見て補佐官として置いている。だから自信を持て。堂々としてろ。分かったらさっさと寝ろ」
『あ……はい……おやすみなさい』

そう言うとリヴァイは自分の部屋へと向かい、花子はリヴァイからの言葉に驚き、しばらく立ち尽くしていた。

『(もしかして……褒めてくれた……?)』

花子はさっきのリヴァイの言葉を思い出すと嬉しくなり、顔がニヤけるのを我慢した。




そして翌朝、慌てた様子で1人の兵士が入り口を勢いよく開け、報告に来た。

「ハンジ分隊長はいますか!?被験体が……巨人が……2体共殺されました!!」

徹夜で話し込んでいたハンジは驚き、慌てて本部に戻る準備をした。
そして全員で本部に戻ることになり、被験体の元へと急いだ。

『(私が来たことで物語が変わるかも、って思ってたけど、そうじゃなさそうね……)』

花子は馬を走らせながら、眉に皺を寄せた。
リヴァイはその様子をジッと見ていた事に花子は気付かなかった。

被験体の元に着くと、殺されてしまったソニーとビーンを目の前に、ハンジはご乱心状態だった。
その様子を遠くから見ていた花子は、同情せずにいられなかった。
すると後ろからエルヴィンに肩を掴まれ、小さい声で話しかけられた。

「花子、君には何が見える?敵は何だと思う?」
『……兵士の中に敵がいます。恐らく、身近な人物だと思います』

花子は勿論犯人が分かっていたが、まだ漫画通りの人物なのか確証はなかった為、名前は出さずに答えた。

「……ほう。後ほど聞かせて貰おう。リヴァイと執務室に来るように」
『了解しました』

そしてエルヴィンは何人かにも同じように聞いて行くのを目で追った。
きっとここで答えられた人はエルヴィンの作戦会議に呼ばれるのだろうと、そのやり取りを見ていて思った。

この作戦で、リヴァイ班のメンバーが死ぬ……。
それをどうしても阻止したい。絶対に。

花子は視線を足元に移し、グッと拳に力を入れた。
すると横からリヴァイに「行くぞ」と言われ、返事をしてその背中を負った。

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21.07.29

リヴァイの喋り方がまだイマイチよく分からない……



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