ゾロの腕の中でひとしきり泣いた私は、どこか憑き物が落ちたみたいにすっきりしていて、ずっと引きずっていたもやもやとした気分はなくなっていた。
枕元からティッシュを取ったゾロは私の鼻にそれをあてがう。
そのまま鼻をかんで、ちーん、なんて、漫画みたいな、なかなかすごい音がして二人してくくくと笑った。

「私いま、ひどい顔してるでしょ」
「おう。すげェ不細工」

目は腫れているし鼻も赤くなっているであろう顔、綺麗ではないと思うけど否定もせずそう言ってきた男の腹にグーでパンチをいれて、また二人して笑う。

「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう。でもあの…」
「おう」
「いま私、ゾロが思ってる通りの状態よ。ずっとどうしようもなくて、何も出来なかった。だけどゾロと話して、もう少し自分でやってみようかなって思ったの。私、サンジ君と話してみる」

ゾロに言われて、なんだかずっと逃げてた自分が恥ずかしくなった。
サンジ君と話すべきじゃないか、きっと話せる、だって私たち、仲間だもの、そう思えたのだった。
ゾロは少し黙り込んで考える風だったけれど、恐らく言いたかったであろう文句の言葉を全て飲み込んで、ただ頷いた。
そのまま私を真っ直ぐ見て言う。

「…わかった。どうしようもねェってなったら、呼べ。おれが全部解決してやる」
「…あんたが?頼りなーい」
「どの口が言ってんだオラ」

冗談めかして言って、ゾロに頬をつねられて。
後はもう、他愛のない話をするだけ。
ゾロはこれ以上聞いてこなかったし、私もこれ以上話さなかった。
そうして夜は更けて。


「おはよう。ナミさん」

朝が、来た。

「おはよう、サンジ君」

いつもより早く目が覚めて、ダイニングには私とサンジ君だけ。
ホットティーを出してくれた彼にお礼を言って、キッチンで忙しなく動き回る彼を見つめる。

「ね、サンジ君、今日、一緒に飲まない?」
「え!?おれと!?嬉しいけど…マリモはいいの?」

声をかけたらぱっと顔を輝かせたサンジ君は、だけどすぐに困ったように眉を下げて言った。
こんな些細なことでも、彼はこうして気にしてくれる。
またずきりと痛んだ胸を抑え、痛いのは私じゃない、彼だ、そう思いなおして、笑った。

「いいのよ。サンジ君のお手製ドリンクとおつまみで飲みたいなって思ったの!あいつには繊細な味なんてわかんないだろうし」
「ハハ…ナミさんも結構言うよなぁ。うん、了解!とびきり美味しいの用意します!」

夜になったら、ちゃんと、言うから。
顔に貼り付けた笑顔とは裏腹に、どきどきと早鐘を打つみたいに音を立てる心臓に蓋をして、今はただ、彼に微笑みかけるだけ。











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