ゾロは、あるいは仲間の中で、一番人間の、いわゆる欲望っていうものに忠実かもしれない。
欲望というと、真っ先に思い浮かべるのはルフィの食欲。
だけどルフィはそれだけに特化していて、全ての欲望に忠実かというと、また違う。
冒険やら、興味のあることがあれば睡眠なんて言葉も知らないかのように飛び回っているし、性欲なんてものは、持ち合わせているんだかいないんだか。
ゾロは、その点全ての欲望に真っ直ぐで、隠すこともしない。
食欲は、ルフィ程ではないけど旺盛だし、睡眠欲は言わずもがな。
そして、私がいま正に頭を悩ませているのが人間の三大欲求の最後のひとつ、性欲だ。
ゾロとは恋人同士で、だからこそもちろんそういう関係にもあったのだけれど、最近のゾロは度を越していると思う。
夜にシて、明け方まで離して貰えず、昼近くになって起きたら、もう一回だ、そう抜け抜けと言う。
ちなみに一回で終わった試しはない。
ようやく逃げ出して、みんなと昼食を取り、なんだかんだ雑務に追われているとあっという間に夜になる。
夕食を終えてのんびり風呂に入っていると、大抵男がやって来て、そのまま。
またなし崩し的に朝まで離して貰えないのだ。
求められるのは、正直嬉しい。
けれど、あまりにも求められすぎて身体は悲鳴を上げているし、睡眠不足で毎日ふらふらだ。
ある日、繰り返し求められて、もう限界とゾロを女部屋から追い出した時、腰が全く立たなくなっていて唖然とした。
これでは急に襲撃された時も戦えないし、そもそも船を導く役割を担っていながら部屋からも出られないのでは航海士失格だ。
ベッドの中で頭を抱えながら、私はひとつ、決意を新たにした。
ゾロと、シない。
一生拒否する訳じゃない。
少し我慢をしてもらって、正常な回数、間隔を取り戻して貰うのだ。
うん、それがいい。
ひとりそう決めた私は、まずは疲れ切った身体を休ませようと睡魔に身を任せた。


どれくらい眠ったのだろう。
くすぐったい感覚にぼんやり目を開けると、間近に緑の頭があった。
なんだろう、頭から布団をかぶっていたはずなのに、ひんやりとした空気が身体を包む。
首を傾げた時、生暖かいものが胸の先端を包んで、思わず声をあげていた。

「やっ…あ…」

段々と意識が覚醒してくる。
どうやら何者かが寝間着をたくし上げて私の胸に吸い付いているらしい。
何者かなんて、言わなくても分かる。

「起きたか、ナミ?ヤろうぜ?」

胸に舌を這わせたまま、不敵に笑う、私の男がそこにいた。
そのまま下に手が降りて行って、太ももを撫で上げられる。
それと同時に我に返った私は、必死に手で男の顔を押しのけ、足で身体を蹴り上げた。

「いやっ!シたくない!離して!」
「はぁ?…んでだよ?ヨクしてやっから、大人しくしてろよ」

暴れる私をいとも簡単にベッドに縫い付けた男は、体重をかけてそのままのしかかってくる。
耳にくちゅくちゅと音を立てて舌をいれられ、背筋をぞくりと快感が走った。
男に慣らされた身体はそれだけで、いとも簡単に反応してしまう。
だが決意を固めたのだ。
このまま流されてはいけないと、男をきつく睨みつける。

「嫌だって言ってるじゃない!無理やりする男なんて嫌いよ!」

いつも流されてしまう私が、珍しくきつく拒否を示したことに男は驚いたらしい。
拘束が緩んだ隙にありったけの力で男を押しのけて、シーツを巻きつけて身体を隠す。
ベッドの上で正座をして睨みつけると、ゾロは気まずそうに頭を掻きながらベッドの上に胡座をかき、意図せず二人、ベッドの上で睨み合うことになってしまった。

「…あー…なんだよ急に…。どっか具合でも悪ィのか?」

困り顔で問いかけてくるゾロに、呆れを通り越して笑いが漏れそうだ。
私が拒否した理由の検討もつかないのか!そう怒鳴りつけてやりたくなる。
そう、ゾロはこんな男だったわ。
大きくため息を吐いて私は言った。

「腰は痛いし、睡眠不足で身体もだるいし、具合なら最悪よ。どっかの誰かさんのせいでね」

相当な嫌味をこめて言ってやったのに、ゾロはキョトンとしている。
考え込む素振りを見せたかと思うとニヤリと笑って思いもよらないことを言ってきた。

「それならそんなに激しくはしねェし、あとでマッサージもしてやっから、今は付き合えよ」
「………」

再び手を伸ばしてきた男に、目眩がした。
あんた、言葉が通じないの?そう言ってやろうかと思ってたのに、勢いよく覆いかぶさってきた男に驚いて、口を開けないまま。

「なぁナミ、お前が目の前にいて、ヤらないでなんていられねェんだ。お前の全部、おれにくれよ」

好きな男にそんなこと言われて、押しのけられる鉄の意志なんて、私は持っていなくて。
あとはもう、与えられた深い口付けに流されるまま。

健全な毎日は、明日から?










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -