刀の手入れをしていたら、おれの女がやってきた。
背中合わせに座ってもたれ掛かり、明日の天気はどーだ、今日の朝食も美味しかった、次の島は栄えてるらしいだの、他愛のない話をし始めて、おれは適当に相槌を打っていた。
不意に、
「そういえばね!」
そう言って、ナミは振り返り首に腕を回して背中に抱きついてきた。
おれはと言うと、今まさに刃の手入れをしようとしていたところで危うく自分の顔を斬りつけるところだった。
「おまっ!あぶねぇじゃねぇか!」
慌てて床に刀を置き、振り返って怒鳴りつけるが、素知らぬ顔でナミは続ける。
「この間、チョッパーに読み聞かせしてあげたのよ。トラ男くんも手伝ってくれてね、トラ男くん、読み聞かせ好きみたいなの!」
「は…?」
トラ男が読み聞かせが好き?
読む方も読まれる方も好きとかありえねぇだろ…。
読み聞かせを聞いてるロー。
読み聞かせてるロー。
想像しちまった…。おぇっ…。
「そりゃねーだろ」
「でも、好きになっちゃった?って聞いたら
、相当な、って言ってたわよ。顔赤くしてね。たぶんバレたの恥ずかしかったんじゃないかしら」
…嫌な予感がする。
ナミの話通りだとしたら、それは…。
刀を傍らに置いて大きくため息を吐く。
「ナミ、お前、それ聞く前何した?」
「え?えーと…あ、お礼のほっぺちゅーしてあげたけど?」
「………」
好きなのは読み聞かせじゃなくてお前だろ!と思ったが口には出さない。
敵に塩を送るほど、おれもお人好しじゃない。
「今度はそれ、おれも呼べ。あともうお礼のちゅーはおれだけにしろ」
振り返りナミを正面から抱きしめる。
えー、だの、なんで?だの、うるさい唇を塞いでやる。
唇を離しても途端に大人しくなったナミの、おれの唾液で湿った唇をひと撫でして、
「お前のココはおれだけのもんだろ?」
耳元で囁いてやったらようやくこっくり頷いた。
魔女を守るのも一苦労。