ブー!

前甲板から奇妙な音が聞こえて、芝生で昼寝をしていたウソップは目を覚ました。

なんだなんだ?敵襲か?!

慌てて起き上がり辺りを見回すも、海は平穏そのもの。
クルーたちも各々好き勝手に過ごしているようで何かが襲ってきた気配はない。

まぁたルフィが何かやらかしたのか?

そう思い直すも、キッチンからサンジにおやつをねだるルフィの声が聞こえて、その考えもすぐにかき消された。
じゃあ一体なんだと、恐る恐るウソップは前甲板へと足を進めた。
その合間にも、ブピー!だの、ブブー!だの、奇妙な音は鳴り止まない。
階段を上りきったところでウソップの目に飛び込んできたのは、この船の航海士、ナミと、音楽家のブルックの姿だった。
珍しい組み合わせにぽかんと2人を見つめていると、また凄まじい音。
それは、ナミが持つものから発せられていた。

「…トランペット?」
「ねぇ、これ全っ然音鳴らないんだけど!壊れてるんじゃないの?!」
「ヨホホホホホ!先程修理したばかりです!ナミさんは少し力みすぎなんですよ」

どうやら、先程からの音は、ナミが力任せにトランペットに息を吹き込んだことによるもののようだ。
ブルックが修理した楽器を、どんな背景があったのかは知らないが、ナミが吹いてみたいと言い出したのだろう。
ウソップには気付かず楽器に集中する2人は言い合い(一方的にナミが文句を言っているだけだが)を続けている。
いつまで経ってもまともな音が出せないナミを見かねてブルックがトランペットを受け取る。
一息ついてトランペットを口元に当てたブルックは、美しいファンファーレの音色を奏ではじめた。

「上手いもんだなぁ…」

ウソップがぽつりと呟くと、ようやくナミがその姿に気づき、こちらに来いとばかりに手招きをしてきた。
そのまま2人、無言でブルックの演奏に聞き入る。
演奏を終えたブルックは恭しく礼をして、二人して大きな拍手を送った。

「ブルックすげぇな!ピアノにバイオリン、ギターに、トランペットも吹けるのかぁ…」

感心するウソップの隣で、ナミはどこかふて腐れたような表情を浮かべている。

「さっきのナミのは、屁かと思ったぜ」

冗談まじりに笑って言ったのに、返ってきたのは本気の拳骨で、甲板に沈み込んだウソップはもう何も言うまいと口を噤んだ。

「さっき、コツは唇に力を入れて吹くこととか言ってたのに!あんた唇ないじゃないのよ!どうやって吹いてんのよ!」

自分が全く出来なかったことを安安とこなされてしまい、どうやら少しプライドが傷ついたらしい。

「魂を込めて演奏すれば、素晴らしい音楽になるものですよ。それに私は音楽家!ナミさんは航海士でしょう。私は航海術は出来ませんが楽器は出来る、ナミさんは航海術に精通してらっしゃるけれど楽器はお得意ではない。当たり前のことです。誰しも得意不得意はあるものですよ」

噛み付くナミをそう言い包めると、またヨホホホ、と独特の笑い声。
さすが、伊達に年を食っている訳ではないなと、ブルックにそう言われ言い返せないナミを見て、ウソップはそんなことを思った。
ナミもこれ以上は諦めたのか、拗ねたような表情を浮かべながらもこれ以上言い募るのは止めたようだった。

「こんな難しいなんて思わなかった。もっと簡単に吹けちゃうんだと思ったのになー」
「ヨホホ。簡単に吹かれては音楽家の立場がありません」


「おーい、おやつの用意ができたぞー」

不意にダイニングの扉が開き、エプロン姿のサンジが顔を出す。

「おやつ!今日はなんでしょうねー。ナミさん、一旦休憩して参りましょう。ウソップさんも」

ブルックがいち早く反応し、2人を促す。

「ねぇ、次はバイオリン教えてよ。そっちの方が出来るような気がするんだけど」
「もちろん!バイオリンもなかなか難しいですが、練習すれば必ず上手くなりますよ」
「よし、がんばろ!」

ナミとブルックは並んで歩きながらダイニングに向かう。
また不可思議な音が響くのだろうと、ウソップは苦笑いを浮かべながら2人の後に続いた。



おやつを食べながら、
「なぁなぁ、さっき誰か甲板でデッケェ屁してただろ!」
と言ったルフィに、どでかいタンコブが出来たのは、言うまでもない。






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