Clap
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麦わら屋の船は海賊船らしくない。
でかい水槽に広い風呂場。
図書館にトレーニングルームまである。
図書館はトニー屋の医術書が多くあり、おれは近頃そこに入り浸っていた。
そこを利用するのはトニー屋とニコ屋、ナミ屋くらいのもので、3人とも近頃新しい本を入手していないからか寄り付いていない。
今日も1人静かに本を読めると思っていたが、先客がいた。
「あら、トラ男くん」
「おー!ロー!」
ナミ屋とトニー屋。
トニー屋はナミ屋の膝の上に座っており、ナミ屋は絵本を広げていた。
「…何してんだ」
「今からナミに本読んでもらうんだ!」
トニー屋はきらきらと目を輝かせている。
読み聞かせということは今日はここで静かに本を読むことはできねぇということだ。
「…そうか。邪魔したな」
踵を返そうとするとズボンの裾が引っ張られた。
「ローも一緒に見よう!」
………。
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なぜこうなった…?
ナミ屋はトニー屋に読み聞かせをしている。
シンデレラ、という童話だ。
トニー屋は展開に一喜一憂している。
何ら問題はない。
問題があるとすれば、その体制で…。
おれの膝の上ににナミ屋が座り、ナミ屋の膝の上にトニー屋が座っていた。
2人を抱え込むように腕を伸ばして絵本を持っているのはおれ。
鼻腔をくすぐるナミ屋の甘い香りのする髪や、身じろぎする度に感じる柔らかい感触に度々思考が停止しそうになる。
その度トニー屋に見えねぇようナミ屋に腕を叩かれ慌ててページをめくる。
ひどく長く感じた読み聞かせが終わって、トニー屋はロビンにも見せてくる!と言って走って行った。
ナミ屋も立ち上がると椅子にもたれ脱力しているおれを振り返った。
「トラ男くん。ありがとね!チョッパーも喜んでたわ!」
にっこり笑って言うと急に顔が近づいてきて、頬からちゅっ、っとリップ音がした。
「な…な…」
顔が熱い。
おれらしくねぇ。
つーかコイツ、わかってやってんのか?
「うふふ、好きになっちゃった…?」
まるで邪鬼のない顔で微笑みかけられ、キス、された頬を押さえてただ見つめ返す。
小さく息を吐き、特に気にも留めていなかったコイツに、相当やられていることに気づいた。
「あぁ、相当な」
「良かったー!そんなに読み聞かせ好きになってくれるなんて!じゃあ次も付き合ってね!」
…は?
いやおいマテ…。
なに言ってんだと問いただす間も無くナミ屋は図書館を出て行ってしまった。
魔女だ、悪魔だ、言われてる理由がよくわかった…。