ふわふわ、と立ち上る煙を見つけて一度立ち止まった。
縁側に座って庭を眺めるその姿をこっそり盗み見る。
何かをするでもなく、ただただ煙草を吸っては煙を吐き出す。


気配も足音も消してこっそりと近付く。
持っている書類が音を立てないように、とも気を遣う。
幸い今日は余り風は無く、偶に微風が吹く程度。
こっそりこっそり近付いて思い切り抱き付いた。
するとかなり驚いたのか口からポロリと煙草が落ちる。
ハッとしたように煙草の火を踏み消して振り返った。
私の姿を見た瞬間、鬼の副長の顔が顔を出す。


「てめぇ、覚悟は出来てんだろうな?」

「ごめんなさい副長。そんなに驚くとは思わなくて」

「ニヤニヤしながら言ってんじゃねえ!明らかに反省してねーだろうが!」

「やですねぇ副長、部下を疑うんですか?」


私の言葉に副長は抜いた刀を思い切り振り下ろした。
それを縁側から降りる事で避けると副長の目がギロリと私を睨む。


「あーあ、縁側壊しちゃって。また山崎くんの仕事増えますねぇ」

「押し付けるんじゃねえよ!てめぇがやれ!」


怒鳴ってばっかりで大変だなぁと思いながら壊したのは副長だと訴える。
すると今度は刀ではなく拳が頭に落ちてきた。
思ったよりも強かった痛みに両手で頭を抑える。


「痛いじゃないですか!今ので脳細胞死にましたよ!」

「良かったじゃねえか、頭が軽くなって」

「良くない!責任取って下さいよ!」


ふん、と鼻で嘲笑った副長は刀を収めると煙草に火を付けた。
煙を吐き出して縁側直せよと言い捨てて歩き出す。
その後ろ姿にベーッと舌を出して縁側へと上がった。


靴下に付いてしまった土を払おうとした時、手にある書類が目に入る。
しまった、と壊れた縁側を飛び越えて走り出す。
曲がり角を曲がると先程去っていった後ろ姿を見つけた。


「副長ー!」

「あ?」

「わわわわ!」


思いの外スピードが出ていたせいで上手くブレーキが効かない。
止まりきれずにそのまま副長にぶつかって一緒に倒れ込む。
これはまるで私が副長を押し倒したようだと頭の何処かで思った。
まあ、押し倒した事に間違いは無いけれどこれは紛れもない事故。


「副長大丈夫ですか?」

「お前、さっきから俺に喧嘩売ってんのか」

「違います違います。これは事故ですよ」

「良いから早く退け。いつまで乗ってんだ。こんなとこ総悟に見られた……ら」


副長の見られたらのたとらの間にピローンという音がした。
嫌な予感に二人で音のした方を向くとそこに居たのはニヤニヤ笑う沖田くん。


「土方さん、邪魔しやしたねぇ」


それじゃ、と背中を向けた瞬間私は後ろに転がった。
副長が怒りながら沖田くんを追い掛けていく。
私の制止しようと伸ばした腕と副長を呼ぶ声も全く気にせずに。


「あ、書類……書き直しかぁ」


くしゃくしゃになって一部破れてしまった書類。
あの写真は副長に任せるとして、書類を書き直そう。




(20130716-20131224)
縁側のアクシデント
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