なんだか眠れなくて相棒を起こさないようにベッドから這い出して窓際に来る。
窓からは冷気が入ってくるからベッドに居るよりも寒い。
ブランケットを引っ掴んで体に巻き付けると少しだけ暖かくなった。


窓の外は雪が降っていて、真っ暗な夜でも不思議と明るく見える。
こんな時心に浮かぶのはもう何年も想っている彼女。
初めて会った時から彼女は真っ直ぐ一番上の兄を見ていた。
それは俺が気持ちをぶつけても兄が婚約しても変わらない。
彼女はただただ真っ直ぐに兄を追い掛けている。


憧れている、と同じように選択科目を取り、監督生に首席まで務めた。
心配で、無理をして欲しくなくて拗ねてみたりした事もある。
最近では彼女が落ち込んでいるのが嫌で堪らなくて兄に当たった。
彼女の気持ちを知っているのなら彼女の事も少し考えろ、と。
俺が口出しをする事ではないと解っていても出さずにはいられなかった。
だって、彼女には前みたいにふんわりと優しく笑っていて欲しい。


コツリ、とガラスに額をくっつけると考え過ぎな頭が冷えていくようだった。
店の事と悪戯の事以外でこんなにも考えるのは彼女の事位だろう。
兄を真っ直ぐ見ている彼女を俺はずっと真っ直ぐ見つめているのだ。


ふと、外に見えた人影に心臓が騒ぎ出す。
それは紛れもない想い人で、こんな夜に外を歩いている。
一応着込んではいるようだけれど、寒い筈だ。
もしかして彼女も眠れないのだろうか。
今なら話が出来て彼女を笑顔に出来るかもしれない。
目を凝らして彼女の行く先をしっかり確認する。
気合いを入れて立ち上がった瞬間に現れたポニーテールの人影。


「なんで」


呟きは誰も返事をしてくれる事なく静かな部屋に消えた。
二人の邪魔はしたくないし何より兄と居る彼女を見たくない。
最近では一緒に居ても笑っていない事の方が多いのだ。
それに、兄としては大切に思っているけれど彼女の事は別。
彼女を泣かせるのであれば兄だろうと許せない。
実際は彼女が泣いているところなんて見た事ないけれど。


座り込んだ拍子にブランケットが引っ掛かって椅子が倒れた。
それなりに大きい音がしたせいか相棒がベッドの中で呻く。


「…なんだ、ジョージ。何かやらかすのか?」

「ただの夢さ」

「そうか」


ゴロリと再び眠りに落ちた相棒の布団を直してやる。
まだ眠れそうにはないけれどベッドに潜り込む。
だって、あの二人が並んで歩いているのなんて今は見たくない。
明日は絶対に彼女の隣には俺がいるようにしよう。




(20130126-20130319)
雪の庭
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