視線を感じてそちらを向くと、慌てたように教科書に隠れる。
再び読んでいる雑誌に目を戻すとまた感じる視線。
さっきからこれの繰り返し。
意地悪を思い付いて体ごと向けてみる。
予想外だったらしい行動にかなり驚いたらしい。
かなり慌てて教科書やら羊皮紙やらバタバタと移動させている。
笑いを堪えて立ち上がり、隣に座った。


「ど、どうしたのシリウス」

「座り心地が良さそうだと思っただけだ」


手を伸ばして髪の毛の先に触れながら言う。
どうしてこう女の子の髪の毛はサラサラなんだろうか。
いつ触っても触り心地抜群だし、反応が面白い。
顔を真っ赤にして隠すように俯いてしまう。
尤も、真っ赤な耳が覗いているから隠しきれないけれど。
可愛いなぁなんて呟いてみればインク瓶をひっくり返した。


「な、なな何をっ」


これ以上無いんじゃないかってくらい顔が真っ赤。
今度は心の中で可愛いと呟きながらインク瓶を立てる。
羊皮紙に染みてしまった部分は杖で吸い取っていく。
真っ赤な顔を両手で挟んで狼狽えている姿はなんとも可愛い。
ぶつぶつと呟いている姿だって可愛いと思うのだから重症だ。


「いつもはそんな事言わないのに」

「素直に思った事を言っただけだろ」

「素直?」


今度はポカンと口を開けている。
心の中でむずむずと悪戯したい願望が芽を出す。
そうなるともう行動に移すしかない、と腰に手を回して引き寄せる。
ピッタリと密着した体はふわふわしていて心地良い。
案の定、顔は真っ赤でまるで林檎みたいだった。


「シシシリウス!」

「どんだけシが多いんだ俺は」


からかうように笑うと目を泳がせて俯く。
心地良い感触を確かめながら林檎の様な頬に口付けを一つ。




(20120110-20121207)
アップルガール
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