寒さに肩を竦ませながらコンビニに入る。
すると見覚えのある姿があって思わず近付いた。
「土方くん」
「ああ」
「部活帰り?」
頷いた土方くんはおにぎりを物色していたらしい。
既に手にしているおにぎりはツナマヨと書かれている。
それに更にマヨネーズを足すのかな、と思いながら一旦離れた。
ホットドリンクの棚から二本選びレジに並ぶ。
隣のレジでは土方くんが同じように会計をしていた。
外に出ると途端に寒さが肌を刺す。
息を吐けば白くなり直ぐに消えていく。
コンビニから出てきた土方くんの隣に並ぶとチラリと見られた。
「土方くん、お茶とカフェオレどっちが良い?」
「茶かな」
「お茶ね。はいどうぞ」
「良いのか?」
「うん。部活お疲れ様」
お礼を言いながら土方くんが微笑む。
その笑顔を見られただけで寒さなんて吹き飛んでしまう。
単純だけれど好きな人の笑顔はやっぱり嬉しい。
私が一人喜んでいると土方くんはおにぎりを開けていてそのままかぶりついた。
マヨネーズかけないのか、なんて思いながらカフェオレで手を温める。
「何か買いに来たんじゃないのか?」
「お使いで出てきたんだけど、途中で家にあったって言われちゃって帰るところだったの」
「そうか。寒いのに大変だったな」
「本当だよー。でも土方くんに会えたし」
冗談っぽく本音を言ってカフェオレの蓋を開けた。
甘くて少し苦いそれを飲んで土方くんを見るとあの切れ長の目が真ん丸になっている。
そんな風に驚かれてしまうと何とも気恥ずかしくなってしまう。
そこはさらりと流して欲しかったなと俯くと自分の足と土方くんの足が見えた。
この距離感が近いようでとてもとても遠く感じる。
「……送る」
「えっ?」
おにぎりを食べ終えた土方くんはそう言って歩き出してしまう。
慌てて追い掛けて隣に並ぶ。
本当に送ってくれるらしく、歩調を合わせてくれる。
緩んでしまう顔をそのままに何を話そうか考えながら歩く。
「学校でも会っただろ。同じクラスだし」
「そうなんだけど、ほら、偶然知り合いに会うと嬉しいし」
「……そうか」
何か納得したような顔をして土方くんは前を向いた。
伝わって欲しかったような、伝わって欲しくなかったような。
自分から誤魔化しておいてそんな事を思うなんて。
隣を歩く土方くんの横顔を盗み見る。
こんな風に並んで歩けるなんて、今はそれで良いか。
いつかその時が来たら、ちゃんと伝わるように話をしよう。
(20170207-20180804)
それは少し先の話