大きな木の下、珍しく本なんか読んでいると思えば目は開いていなかった。
風通しも良く日陰になっているから今日みたいな晴れの日は居心地が良いだろう。
開きっぱなしの本は風でページが捲れていく。
覗き込んでみると何やら難しい理論が延々と書かれていた。


いつもなら一緒に居るフレッドは何処へ行ったんだろう。
アンジェリーナが居なかったから一緒だろうか。
リーはアリシアと談話室の隅で何やら相談をしていた。
つまり暫くジョージは一人で、本を読んでいたらいつの間にかというパターンだろうか。
寝ていると静かだと言ったアンジェリーナの言葉を思い出す。


「……見物料は一ガリオンだ」


突然目を開けたジョージがそう言いながら手を差し出してくる。
その手の上に持ってきたビスケットを乗せると不満そうに唇を尖らせた。
しかし直ぐにニヤリと笑ってビスケットを丸々放り込む。


「いつ起きたの?」

「寝てない。姿が見えたから驚かしてやろうと思って」


そう言って本をパラパラと捲りお目当てのページを見つけると寝転がる。
しかもジョージの頭は私の足の上で、その状態で本を読み始めた。


「膝枕なら一ガリオン」


ジョージの真似をしてそんな事を言ってみる。
私の真似をして置いてあった箱からビスケットを取り出し、私へと差し出す。
受け取って口の中に放り込むとバターの香りが広がった。


「これ、読み終わった本?」

「ああ。読んで良いぜ」


積まれている本の中から惹かれたタイトルを引き抜く。
恋愛小説なんて珍しいというか、何とも似合わない物を読んだのか。
好んで読んだのか気紛れかは解らない。
どんな内容か気になりこれを読む事にする。


淡々と進んでいく物語も半分を過ぎて、一旦休憩しようと両手を伸ばす。
そろそろ足を動かしたいなぁなんて思ったりもする。
ずっと同じ体勢で居るのは幾ら座っているとはいえ結構疲れるのだ。
ジョージ、と名前を呼びながら視線を下げると閉じられた瞼が見える。
そして規則正しく上下する胸に、聞こえてくる寝息。


「寝てるの?」


声を潜めながら聞いてみても返事は無い。
という事はジョージが起きるまでこのままだろうか。
それも辛いけれど起こしてしまうのも憚られる。
悩んでも結論は出ないから、この本を読み終えてから考えよう。




(20150527-20170207)
静かな日
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