煙草の煙が空に消えていくのを眺めながら瞼の重みと戦う。
いつも通り寝ていつも通り起きて稽古や書類整理を済ませ、近藤さんを探しに出て来た。
志村姉に何をされようがあの人は全く諦めようという気持ちが無い。
真選組の局長なのだからストーカーは辞めて欲しいのが正直なところだ。


ゆっくり流れる雲と透明になっていく煙草の煙。
休憩にと座ってみたが睡魔は全くの予想外の出来事だ。
偶然目の前を近藤さんが通りかかったりしないだろうか。
今日に限って何故志村姉は外出しているのだ。
寝不足という訳でもないのに、相変わらず瞼は重い。


「副長、サボリですか?」

「煙草休憩だ。近藤さん見つかったか?」

「いいえ。万事屋に行ってみましたが留守でした」

「……そうか」


隣に座る気配がして顔を向けると電話をかけているのが見えた。
いつの間にか短くなった煙草を携帯灰皿に捨て、新しい煙草に火を点ける。
煙草を吸っていないと寝てしまいそうだ。
隣から留守番電話を告げる音声ガイドが微かに聞こえる。
やはりまだ近藤さんの携帯には繋がらないらしい。


「局長が羨ましいです」

「羨ましい?」

「はい。真っ直ぐ好きな相手に向かって行けて」


報われてないですけど、と呟いて肩を竦める。
こいつにも惚れた相手が居るのか、とぼんやり思う。
俺にだって惚れた女が居るのだから当たり前か。
真選組に入っていなければ変わっていたのかもしれない。
それこそ近藤さんみたいに真っ直ぐ好意を向けられたのだろう。


「ところで副長、眠いんですか?」

「眠くねーよ」

「随分長い時間座ってるから眠いのかと思いました」

「……お前本当に近藤さん探してたか?」

「探してましたよ」


証拠を見せるかのようにメールの送信済み一覧を見せられた。
並ぶ近藤さんの名前に一体何通送ったんだと言いたくなる。


「私は近藤さんの行きそうな場所をもう一度見て来ます」

「ああ」

「副長は少し休んでいて下さい」


は?と顔を上げた時にはもう背中を向けて携帯を耳に当てていた。
休んでいていたい気持ちはあったが他人に言われるとそんな気持ちは消え失せる。
いつの間にか短くなっていた煙草を灰皿に入れ立ち上がった。




(20150527-20170207)
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