初めて見る雪にスナフキンの瞳はキラキラと輝きっぱなしだった。
手をくっつけている窓は冷たいだろうに雪に対する興味の方が勝っているらしい。
タオルや着替えを用意してスナフキンに手袋とマフラー、コートを着せる。


「おそと、いくの?」


パアッと明るくなった顔はとても可愛い。
頭を撫でてから二階に上がり、窓から外へ出る。
不思議そうなスナフキンに埋まっている玄関を見せると納得したらしい。
肉親の贔屓目無しにこの子はなかなか頭が良いんじゃないかと思う。
いつもと違う足元の感覚が楽しいけれど不安なようで繋いでいる手に力が入っている。
大丈夫だと頭を撫でてやると安心したようににっこり笑った。


いつもの林檎の木まで歩いてくると、スナフキンがキョロキョロし出す。
きっとヨクサルを探しているんだろう。
ヨクサルの事だから、まだ寝ているか食事を取っていそうだ。
下手したら今日は起きて来ないかもしれない。
雪を見て夢の世界に逆戻り、なんて当たり前。
ヨクサルとはそういう人だ。


「雪だるま作ろうか。雪を握って」

「うん」

「あとは転がすの」


私の言った通りにスナフキンが雪玉を転がし始める。
私もその隣で同じように少し大きな雪玉を転がす。
ある程度の大きさになったところでスナフキンに枝を拾いに行かせる。
その間に雪玉を乗せる為に屈むと、嗅ぎ慣れたパイプの匂いがした。


「元気だね、ミムラのお嬢さん」

「あら珍しい。今日は起きたのね」


偶にはね、と言いながらヨクサルはパイプの火を消す。
とりあえず雪玉を乗せてしまおうと持ち上げる。
何とか乗せ終えて息を吐くと、スナフキンが戻ってきた。


「あ、パパ!」

「やあスナフキン。枝を拾ってきたのかい?」

「うん。おててなの。おねえちゃんはやく!」


スナフキンを抱き上げて雪だるまの手の部分に枝を刺す。
それから小さな枝を幾つも並べて口を作る。
目と鼻は予め家から持ってきていた木炭で付けて完成。
スナフキンと喜んでいると珍しくヨクサルが鍋で何かを用意をしていた。


「二人ともおいで。ほらスナフキン、熱いから気を付けて」

「うん!」


珍しいと思っているとお嬢さんもと急かされる。
手渡されたカップの中身は鍋ココアだった。
ヨクサルの作る鍋ココアはとても美味しい。
ヨクサルと出会って間もない頃に初めて飲んで以来の好物。


「ヨクサル、今日は気が向いたの?」

「今日はお嬢さんが外で遊ぶ気がしたからね」


わざわざ作りに来てくれたという事だろうか。
そう聞こうとしてやっぱり辞めようと言葉を飲み込む。
一口飲んだ鍋ココアは相変わらずとても美味しい。




(20141115-20150527)
初めての雪と鍋ココア
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