水際で遊んでいるフレッドとジョージを見つけて思わず足を止めた。
悪戯をしていない二人は珍しくて楽しそうな様子に自然と口角が上がる。
散歩をしようと思っていたけれど、楽しそうな二人を眺めるのも良い。
杖を振ってスケッチブックと鉛筆を出して木の幹に体を預けるように座った。


こうして絵を描いてみると改めて二人がそっくりなのだと解る。
普段からそっくりだとは思うけれど描くとなると余計にそう思う。
そっくりに描こうとするとそれはとても難しい。
それでもやっぱり描きたいと思うのは楽しそうな空気に感染しているからだろう。
ただでさえ試験が終わって学校中が楽しく明るい空気で包まれている。


「お、何してんだ?」

「あ、チャーリー」

「絵描いてんのか。しかもフレッドとジョージの」

「うん。楽しそうじゃない?」

「確かにな」


そう言うと徐に隣に座り、手にしていた本を開いた。
チラリと見えた本のタイトルにはドラゴンの文字。
どうやら此処で読む事にしたらしい。
鳶色の瞳は既に真剣に文字を追い掛けていた。


集中して動かしていた手を止めてスケッチブックをじっくりと眺める。
自画自賛だけれど、なかなか上手く描けたように思う。
フレッドとジョージは水遊びに飽きたのかいつの間にか居なくなっている。
だから今日はもう終わりだとスケッチブックを閉じるとチャーリーが声を上げた。


「何?」

「いや……今日はもう描かないのか?」

「そのつもりだけど」

「身近に素敵な被写体が居ると思わないか?」


ポーズを決めたチャーリーを見て思わず吹き出してしまう。
閉じたばかりのスケッチブックを開くとチャーリーは慌てて体制を戻す。
たった今のポーズでも面白いから私は構わないのだけどチャーリーはそうはいかないらしい。
本を持った方が良いかとか持たない方が良いかと慌てている。


「暇だと思うから、読んでて良いよ。チャーリーの好きなようにして」

「お、おう」


鉛筆とスケッチブックが立てる音と本を捲る時に紙が擦れる音。
湖の周りに居る生徒の声の中に混ざって聞こえてくる。


「ドラゴン、かっこいいよな」

「え?」

「ほら、これ見てくれよ。ルーマニア・ロングホーン!この深緑色の鱗とか金色に煌めく長い角とか!数が減ってるのが残念だよなぁ」


キラキラ瞳を輝かせていつか見に行きたいとまた本に目を戻す。
スケッチブックには本を読んでいるチャーリーを描いてある。
そのチャーリーの肩に今見たルーマニア・ロングホーンを描き足してみた。
これを見たチャーリーはどんな顔をするか、楽しみな余り顔が自然に笑ってしまう。




(20140521-20141115)
スケッチ
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