コロコロと雪玉を転がして続けていたら名前を呼ばれ、そちらを振り返る。
振り返るとビルが雪を溶かしながら歩いて来るところだった。
大きな袋を抱えていて、中から色とりどりの包装紙が見え隠れしている。
「それ、貰ったの?」
「うん。梟便で送ってくれれば良いのに」
「デートに誘いたい子達でしょう?」
「名前、よく解ったね」
ニコニコ笑いながらビルが雪を溶かし腰を降ろす。
雪玉を転がす作業を続けて先に作っておいた雪玉に乗せる。
スコップで固めながら安定させると顔を作る為雪を削っていく。
その間ビルは何も言わないけれどずっと此方を見ていた。
一旦手を止めて振り返ると目が合いニッコリと笑顔を向けられる。
「ずっとそこに居るの?」
「駄目?」
「駄目じゃないわ。でも寒くない?」
「平気だよ。名前こそ寒いでしょ」
「大丈夫。ちゃんと防寒してるもの」
手袋は防水の呪文を掛けているし、マフラーにニット帽にセーターと完璧だ。
なんなら動いたせいで少し暑いと感じている。
顔作りを終え、手に使う木の枝を忘れていた事に気が付いた。
少し離れた所に探しに行くとちょうど良い枝が二本落ちている。
それを拾って戻ってくると座っていたビルが作りかけの雪だるまの前に立っていた。
「ねえ名前」
適当に返事をしながら雪だるまに拾ってきた枝を挿す。
ビルが立っているから正面からは見えないけれど一周確認する。
なかなか上手く出来たんじゃないかと思う。
「これ、誰に似せたの?」
「ビルよ。思っていたより上手に出来たと思うの。私からの誕生日プレゼント」
ビルの顔を覗き込むと複雑そうな顔をしていた。
そんなビルの肩に手を置いて背伸びする。
唇で触れた頬は冷たくて、寒いんじゃないだろうか。
ローブのポケットから取り出したマフラーをそんなビルの首に巻く。
「誕生日おめでとう、ビル」
「……プレゼントは雪だるまじゃなかったの?」
「そうよ。マフラーはオマケなの」
「誰かカメラ持ってるか聞きに行かないと」
腕を引かれ、そのまま少し強く抱き締められる。
写真に撮ろうと思ってくれるくらいには気に入ってくれたらしい。
頑張って雪だるまを作って良かった。
(20151129)
特別な思い出を