見当を付けた場所の何番目になるだろうか。
こんな事なら最初からジェームズに聞けば良かった。
どんな手段を使っているか解らないけれどジェームズは人の居場所が解る。
ジェームズに限った話ではなく悪戯仕掛人の四人の事なのだけど。
木の下にあるベンチに寝転がっているけれど、その身長のせいで足は投げ出されている。
これでもあのブラック家の長男だというのによくこんな所で昼寝が出来るものだ。
ベンチの前にしゃがみ込んで無防備な寝姿を眺める。
端正な顔を持つ人間はただ眠っているだけでも綺麗で絵になると思う。
「何か、悔しい」
起きてしまえとシリウスの頬を人差し指でつつく。
肌も綺麗だなんて、益々悔しくなってくる。
シリウスの性格からしてお手入れなんてしていないだろう。
お坊ちゃまは色々と違いますね、と心の中で呟く。
声に出して言ったらシリウスに怒られてしまう。
それに、ブラック家を通してシリウスを見ている訳では無いし。
「……あ?」
「おはようシリウス」
「ああ、名前か」
突然開いた瞼の下から現れた灰色の瞳に私が映っている。
けれど、それもシリウスが起き上がるまでの一瞬。
あっという間に高い場所まで行ってしまったので、ベンチの空いた場所に腰を下ろした。
チラリと灰色の瞳が此方を見たのはきっとほぼ無意識だろう。
伸びと欠伸を同時にするシリウスはまだ眠いのか気怠げな雰囲気を纏っている。
「探したのよ」
「何か、用事か?」
「用事って訳じゃ無いけど」
会いたかったからと言うには離れている時間は短いものだ。
皆で一緒に昼食を食べたのはつい先程の事。
ただやる事も無いからシリウスを探そうと思っただけで特に理由は無い。
強いて言えば珍しくジェームズが一人で談話室に居たから、だろうか。
「ああ、もしかして俺に会いたくなった?」
さっと顎に手を添えられたと思ったら顔がぐっと近付いた。
先程まで気怠げにしていたのが嘘のようにニヤリと笑いながら。
顎に添えられた手を払ってシリウスの体を押す。
素直じゃねえな、と笑いながらシリウスは伸びをする。
「ジェームズが独りぼっちだったわよ」
「リーマスとピーターは?」
「図書館でレポートって言ってたわ」
「二人も逃げたな」
「逃げた、ってどういう事?」
それはなと言いながらシリウスは体を倒し、私の膝に頭を乗せた。
シリウスの綺麗な黒髪が皮膚をなぞる感触が擽ったい。
「どうしてもエバンズとレポートをやりたいから談話室で張ってるらしいぜ」
「……リリーなら図書館に行くって」
「帰ってくるのを待つんだとよ」
「ジェームズって健気なのかストーカーなのかよく解らないわ」
私の言葉にケラケラと笑いながらシリウスは目を閉じる。
先程まで昼寝をしていたというのにまた昼寝をするのだろうか。
人の膝を枕にしてだなんて、全く身動きが取れない。
特に何もやる事が無いから良いと言えば良いのだけれど。
小さな子供にするように頭を撫でると寝息が聞こえてきた。
シリウスが起きるまでの時間、何をして過ごそうか。
綺麗な顔を眺めているのも良いかもしれない。
(20140731)
眠り姫?