ビルと一緒に居る元に戻った名前を見てホッと息を吐いた。
無事に戻った事が嬉しくて、浮かれていたのだと思う。


「作ったのは二人で?」

「はい、そうです」

「でも名前にってつもりはなくて」


チラリと名前の目が此方を向いてフレッドが黙る。
目の前には俺のベッドに手と足を組んで座る名前、そして俺達は二人揃って床の上。
いつになく名前が怒っているのだという事は十分に解る。


「私のカップに入れたのは?」

「俺じゃないよ。俺も知らなかったんだ」

「ふぅん?フレッドなの?」

「名前、ほんの冗談だよ、冗談。そんなに怒らないでくれよ」


軽い調子でそう言ったフレッドだったけれど、名前の溜息で口を閉ざした。
名前が怒ったのなんて余り見た事はない。
どうしたら許してくれるだろうか。
というか、何故俺まで対象になっているのだろう。
今回は本当にフレッド単独の行動だというのに。
そりゃあ確かに小さくなった名前を見てナイスとは思ったけれど。


「…そんなに、怒ってる訳じゃないのよ。随分お説教はされたみたいだし」

「え?」

「ジニーが教えてくれたわ。モリーさんとビルに怒られたって」

「そう!そうなんだよ!俺達充分反省してるんだ。なあジョージ?」

「ああ、そうだな。やったのは俺じゃないけど」


ボソッと付け加えた言葉でフレッドはシュンとしてしまった。
どうやらフレッドは本当に反省しているらしい。
双子の俺だから解るのか、他から見ても解るのか。


「もう怒ってないわ。フレッド、反省してるみたいだし。その代わり、部屋の片付けは手伝わないわ」


名前の言葉にパッと顔を上げ、そして嘘だろと顔を引きつらせる。
部屋の片付けはずっと言われていてそろそろやらなければきっと爆弾が落ちる。
怒られるのなんて慣れているけれど、片付けなければ勝手に掃除されてしまう。
そうなれば二人で開発した物全てを捨てられるなんて事になりかねない。


「ジョージと二人で頑張ってね」

「え?名前、ちょっと待って」


フレッドが引き止めても名前は笑顔で手を振るだけだった。
パタンと閉まった扉を見つめるフレッドの顔は青い。
というか、俺と二人って、名前はやっぱり俺に対しても怒っている。
誤解を解かなければ!と立ち上がるとフレッドの腕が伸びてきた。
それを交わすと勢い良く部屋から出て名前を追い掛ける。


名前はリビングのソファーで本を開いていた。
新しい教科書はまだだから、ビルから貰った本だろうか。
名前はビルから貰った本を繰り返し読んでいる。


「名前!」

「あら、ジョージ。部屋の片付けは良いの?」

「それは…ちゃんとやるよ。隣、座って良い?」

「どうぞ」


名前の隣に座ると窓の外が見える事に気付いた。
庭でチャーリーと何かをしているビル。
ああ、きっと名前はビルを見ていたのだ。


「あの二人ね、パーシーをからかうんですって。ふふふ、モリーさんにバレなきゃ良いけど」

「バレないんじゃない?あの二人は俺達より隠すの上手いよ」

「そうね、確かに。あ、そういえばビルに言われたわ」

「ん?何を?」

「小さくなった私に会えて皆喜んでたって。そんな事言われちゃったら、怒れないじゃない?」


クスクスと楽しそうに笑う名前を見ているとパースの怒る声がした。
それに続いてビルとチャーリーの笑い声。


「さ、部屋の片付けしましょうか」

「え?名前手伝わないって」

「フレッドも本当に反省したでしょ?モリーさんに怒られたいなら、別だけど」


どうする?と首を傾げた名前の手を取って部屋へと戻る。
名前は俺達に甘いと思う。
それがどんな感情かは今はどうでも良い。
楽しそうに笑っているから、それで充分だ。




(20131127) end.
小瓶の中身 10
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