「これ、チェス?」

「うん、そうだよ」


ロンとチェスをしていたら横から名前が覗き込んできた。
ちょうど駒が動いたのを見て名前は凄いと顔を輝かせる。
初めて魔法を見た時の自分を思い出す。
きっと今の名前と同じ気持ちで、ワクワクして胸が一杯だったのだ。


「名前は、チェスをやるの?」

「ううん、やらない。パパがやってるのを見た事はあるけど、解らないんだもん」

「そんな!名前は強いから昔からやってるんだと思ってた!」


意外だ!と驚いたロンは一から駒の説明を始める。
けれど名前が困ったような顔をしていたので止めるとロンは少し機嫌を損ねたようだった。
どうも小さな名前駒が動く事に興味はあってもチェス自体には余り興味は無いらしい。


「ハリーお兄ちゃんは飛ぶのが凄く上手だってジニーお姉ちゃんに聞いたの」

「そうさ。ハリーはシーカーだからね!」

「ああ、シーカーっていうのはクィディッチってスポーツのポジションの一つだよ」


きょとんとした名前に説明を加えると何となく解ったようだった。
今の名前はクィディッチを知らないという事を忘れているロンは驚いていたけれど。
そういえばチャーリーと箒に乗っていたから箒に乗るのが好きなのかもしれない。
確かにマグルの世界での魔法使いと言えば箒は欠かせないアイテム。


「箒に乗る?」

「良いの?」

「うん、ちょっと待ってて。僕箒を取ってくる」


ファイアボルトを取って戻って来るとロンが名前にファイアボルトは凄いんだという話をしていた。
名前はにこにこしながら聞いているけれど、理解出来ているのかは解らない。


名前を前に乗せて後ろから支えながら浮かび上がる。
いつもとは違う状態に少しだけ戸惑うけれど、名前を落とす訳にはいかない。
箒を掴む手に力を込め直してまた少しだけ高度を上げた。


「お兄ちゃんは恐くない?」

「僕は平気だけど…恐い?」

「ううん、恐くないよ」

「良かった。ちゃんと掴まってて」


うん、と名前が頷いたのを確認して前へと進む。
上がったり下がったりする度に名前の楽しそうな声が聞こえる。
やっと地面に戻った時には二人とも髪がボサボサだった。
それを見たロンが変なの!と笑い出すと名前も同じように笑う。


「楽しかった!有難うハリーお兄ちゃん!」

「どう致しまして」

「ロンお兄ちゃんが教えてくれた通りだったよ。ロンお兄ちゃん箒の事詳しいね!」

「え?あ、そりゃあ、ファイアボルトだからな!な、ハリー!」


褒められた事で顔を赤くしたロンはそう言ってそわそわし出す。
それを不思議に思ったらしい名前がどうしたの?とロンを覗き込むから更に慌てて目が泳いでいる。


「名前、今度はロンと乗ってきなよ。ロンも飛ぶの上手だから」

「本当?」

「え?おい、ハリー」

「乗りたい!」

「ほら、名前もこう言ってるし、行ってこいよ」


ファイアボルトをロンの手に押し付けて背中を押す。
戸惑っていたロンもファイアボルトと名前を何度も交互に見て乗る気になったらしい。
どんどん浮かび上がっていく二人を見送りながら自然と顔が緩むのを感じた。




(20131111)
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