必死になって羽根ペンを動かしていたらドアをノックする音がした。
全くこんな忙しい時にノックをするなんて信じられない。
普段何かにつけて悪戯をするフレッドやジョージは今名前にベッタリしようとしている筈。
尤も、名前自身はチャーリーにベッタリで一緒に箒に乗っているのも見掛けた。
早く書類を仕上げてクラウチさんにお渡ししなければならない僕は相手は出来ない。
無視をしようと思った時、再びノックをする音がして仕方なく返事をした。


「あの、パーシー、今日もお仕事忙しい?」


控え目に開けられた扉から顔を覗かせた名前がそう尋ねてくる。
正直な話予定は詰まっているしまだまだ書類に書かなければならない事は沢山あった。
それなのに何故か名前を追い返す気になれず、部屋の中に招き入れる。
食事の時もチャーリーと居るからか、久しぶりにちゃんと顔を見たかもしれない。


「名前、魔法の本に興味はあるかい?」

「うん!」

「これは簡単な方だから、読んでみるといい。解らなかったら聞いてくれ」

「解った。有難うパーシー!」


ベッドの上に座って一年生の呪文学の教科書を開く。
小さくなってしまった名前には少し難しいかもしれない。
そう思う反面、名前なら理解出来るかもしれないという期待もある。
名前は本が好きのようでビルに貰った本や図書館の本をよく読んでいた。
呪文集や薬草、魔法薬から物語等、その内容は幅広い。


ひたすら羽根ペンを動かしてそろそろ手を休ませようと机の上に置く。
気持ちを切り換える為に息を吐いて振り返ると熱心に本を読んでいる名前の姿。
一度も声を掛けられなかったが、解らないところはなかったのだろうか。
体を動かした時に椅子の軋む音がして、それに名前が顔を上げた。


「お仕事、終わったの?」

「いや、少し休憩しようと思ったんだ。解らないところはなかったかい?」

「あのね、」


そう言って名前はページを捲り、何ヶ所か指で指す。
もしかしたら聞きたいのを我慢していたのだろうか。
家の兄弟とは大違いだ、と感動して気合いを入れて説明を始める。
なるべく言葉を噛み砕いて名前にも解りやすく。


「うーん…これを未来の私は勉強するの?」

「そうだよ。名前はとても優秀だ」

「きっとパーシーに教えて貰ってたんだね。すっごく解りやすいよ!」


にこにこ笑ってそう言うとまた呪文集に目を落とす。
勉強を教えたとしてこんな事を言ってくれるのは名前かハーマイオニーしか居ない。
弟達に至っては勉強なんて好きではなく近寄れば悪戯だったり邪魔ばかりする。
ジニーは多少勉強をしているけれど、名前に聞いてばかり。
久しぶりに感じた喜びに気合いが入り、名前の解らないところを付きっきりで説明する。
クラウチさんの書類が頭を過ぎったが、それよりも今が楽しい。
書類なら、後から死ぬ気になって頑張れば良いのだ。




(20131111)
小瓶の中身 6
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