最初は驚いたものの、暫くしたら随分慣れてきた。
初めて会った時を思い出すからか、幼くなっているとは言え中身は変わらないからか。
紅茶を淹れてやればお代わりを強請られるし、箒に乗せてやれば顔がキラキラと輝く。
朝からずっと俺の後ろを追い掛けて来る名前はとても可愛い。
と同時に不機嫌なジョージからの視線がとても痛かった。


「これ、火を吹くの?」

「おー、気を付けろよ。髪の毛焦げちゃうからな」


ドラゴンの模型を覗き込んでいた名前が慌てて顔を離す。
危なくないように一番大人しいオーストラリア・ニュージーランド・オパールアイ種の模型を用意した。
基本的に空腹時以外の殺生はしない比較的穏やかな品種だから心配は無いだろう。
それでも名前はビクビクしながら少し離れた場所で模型を見ている。
掌に乗せて名前の顔付近に近付けると大慌てで俺の背中に隠れた。


「名前、大丈夫だ。今眠ってるから」

「本当?起きたりしない?」

「うーん…多分な」


恐る恐る手を伸ばした名前はそっと模型に触れる。
そして二、三度撫でてからまた背中に隠れてしまった。
それでも気になるらしくチラチラと見ている。


「恐いか?」

「うん、ちょっと…でも小さいから、平気」

「そうかそうか、強いな名前は」


頭を撫でると引きつっていた表情が和らいだ。
もうドラゴンは満足したとばかりに名前は本棚に目を移す。
模型をしまっていると部屋の扉が開く音がした。
振り向くとママが覗いていて、名前を見るとにっこりと微笑む。


「チャーリーにちょっとお願いがあるんだけど…買い物に行ってきて欲しいのよ」

「良いよ。名前も一緒に行くか?」

「うん!行きたい!」

「あら、じゃあちょっと待っててちょうだい!」


ママが慌てて階段を降りていく音を聞きながら名前と手を繋いで後を追う。




ジニーが小さな頃着ていたローブは名前にピッタリだった。
魔法使いみたいだとご機嫌な名前と手を繋いでダイアゴン横丁を歩く。
キラキラと輝く目は忙しなくあちこちを見回していて止まる事が無い。
何度もぶつかりそうになるし、転びそうにもなった。
初めて名前がダイアゴン横丁に来た時もこうだったのかと思うと微笑ましい。


「よし、全部買ったな。名前、何か見たい店はあるか?」

「あるけど、沢山あって選べないよ」

「言ってみろ。行けそうなとこは行こう」

「うん!」


名前の挙げた店は割と隣接している店が多かった。
大方歩きながら隣へ隣へと興味が移っていったのだろう。


雑貨屋で名前がジッと見つめていた猫の形のポシェット。
それを肩から掛けて嬉しそうな名前は相変わらずキョロキョロしている。
危ないぞと声を掛けようとした時、名前が思い切り人にぶつかった。


「いたた」

「前を見て歩け」

「名前、大丈夫か?悪かったな」

「ごめんなさい」


ぺこっと頭を下げて謝る名前を見て相手は目を見開く。
プラチナ・ブロンドに青色の瞳のその人物は何処かで見たような気がする。
何処だったか、と記憶を探っていると名前がわあ!と声を上げた。


「とっても綺麗な髪の毛!」

「…お前、名前、なのか?」

「あれ?お兄ちゃんも私を知ってるの?」

「名前は?」

「私は名前・名字だよ」

「ああ!お前マルフォイか!」


そう言った瞬間、青色の瞳が此方を睨む。
笑顔を向けると驚いたように目を見開き、顔を逸らされてしまった。




(20131021)
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