フレッドとジョージが言うには名前は六歳の頃に戻ってしまって、未来に来ているのだと言ってあるらしい。
その名前は今ママに叱られているフレッドとジョージをおろおろしながら見ている。
昔からお姉ちゃんのような存在だった名前が私よりも小さいなんて不思議な気分だ。
それに、いつものようにジニーではなくお姉ちゃんと呼ばれるのも慣れない。
とりあえず、このまま此処に居ては名前が心配する一方。
小さな手を握って名前を連れ出し、私の部屋へと連れて行く。


「お姉ちゃん、フレッドとジョージは?」

「大丈夫。あの二人がママに怒られるのはいつもの事なのよ」


名前をベッドに座らせてクローゼットを開ける。
確かこの奥の方にあった筈だと探してみればやっぱりあった。
小さい頃の私の服が今の名前にはピッタリだろう。


「名前、着替えましょう」


頷いたのは確かに名前なのだけど、やっぱり慣れない。
ワンピースは名前にピッタリで、私が着るよりも可愛く見える。
今まで着ていた服を名前のトランクにしまう。
その横にいつの間にか名前が来ていて、トランクを覗き込んでいた。


「これ、お姉ちゃんの?」

「このトランクは名前のよ。名前は私と一緒の部屋なのよ」

「そうなの?じゃあ今日も?」

「そうよ」

「やった!」


嬉しそうに笑った名前は両手を叩いて喜ぶ。
その時、ノックの音がしてママが入ってきた。
途端に緊張した顔になった名前の頭を撫でる。
これもまたやっぱり不思議な気分。


「名前、私達のママよ」

「あ、あの、名前・名字です」


私の服を片手でぎゅっと握って、でもハッキリとした声でそう名乗る。
きっと先程のお説教のイメージが強いのだろう。
ママが笑顔を浮かべて頭を撫でるとやっと名前も笑った。




朝から双子はママに言われた掃除をやっていてとても静か。
最初は驚いていた皆も説明してからは名前と代わる代わる話していた。
ロンとハリーだけは、戸惑っていたみたいだけど。


今日は元々名前に勉強を教えて貰う約束だった。
でも名前が小さくなってしまった以上勉強は出来ない。
ハーマイオニーと相談した結果、ピクニックに来ていた。
幸い、今日は曇っていてそんなに暑くない。


「違うよお姉ちゃん、こっちに通して」

「こっち?あっ!駄目、千切れてしまったわ。新しいのを探さないと」

「大丈夫。私のを分けてあげる」


そう言って名前は何本も置かれた花をハーマイオニーに差し出す。
小さな名前が花冠の作り方をハーマイオニーに教える。
普段とあんまり変わらない光景が少しだけ可笑しかった。
二人が作っている声を聞きながら私は編み物を進める。
出来上がったら名前にプレゼントしようと決めている靴下。


「ジニーお姉ちゃん」

「なあに?」

「これ、プレゼント」


少し背伸びをして名前は私の頭に何かを被せる。
先程まで持っていた花冠が無いから、きっと今被っているのは名前の作った花冠。
似合うと喜ぶ名前を抱き締めてお礼を言えば小さな手が抱き締め返してくれた。


「じゃあ、今度は私が名前に作るわ。教えてくれる?」

「うん!」


未だに苦戦しているハーマイオニーの横に座る。
その瞬間またブチッと茎が千切れる音がして、名前と顔を見合わせて笑った。
もう一回、と名前に励まされたハーマイオニーと一緒に花を手に取る。
けれどバシンという音にまたハーマイオニーの花冠の茎は千切れてしまった。
これは今度こそやる気を失ってしまうかもしれない。


「あれ?家の前に姿現しするつもりだったんだけど」

「此処は果樹園よ。お帰りなさいチャーリー」

「ただいまジニー。ハーマイオニーと…誰?」


似てるけどでも、とぶつぶつ言うチャーリーに対して名前の瞳はとてもキラキラとしていた。




(20131012)
小瓶の中身 3
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