こそこそ談話室の端っこを歩いていく名前。
思いきって告白したのにその返事は無いままだ。
嫌な事に学校中に広まっている。
廊下ではフられたのだと同情の言葉をかけられる事が少し。
大半はざまあみろというニュアンスの内容だった。


もう少しで女子寮への階段というところで名前に追いつく。
腕を掴もうか肩を掴もうか悩んで声をかける。
振り向きはしないものの立ち止まってくれた。


「名前」


もう一度名前を呼ぶと振り向いてくれる。
ただ顔は俯いていて表情は解らなかった。
散歩しようと誘えば頷いてくれたので胸を撫で下ろす。


なんとなく、話を切り出せずに無言で歩く。
つかず離れず隣を歩く名前を偶に盗み見見ると、真っ直ぐ前を向いていた。
俺から誘ったのだから名前にしてみれば待っている状態。
つまりは俺が話し出さなければならないのだ。


それでもなんと切り出そうか悩む。
名前もなんとなく気付いていてくれたら嬉しいのだけど。
小さく息を吐いていつの間にか着いていた湖の近くに座った。
ちょこん、と隣に座る名前との距離が20cm程。


「あのさ」


話しかけようとして直ぐ手で遮られた。
見せられている掌は俺よりも細い。
せっかく話を切り出そうと意気込んだのに。
出鼻を挫かれて少しだけ気分が落ち込んでしまう。


「私、多分貴方が言いたい事解るわ」

「え?」

「返事をって言うんでしょう?」


小さな声で、でもハッキリとした声で聞こえた言葉。
一気に心臓が煩く騒ぎ出す。
落ち着け、俺、自分に言い聞かせる。
どうにもこういう瞬間は苦手だ。


「シリウス、私考えたわ。凄く考えたの。それでね、いきなりだったし、驚いたしよく解らなくなっちゃって」


ドキドキと鳴る心臓が煩くて周りの音が聞きづらい。
それなのに名前の声だけはハッキリと聞こえる。
喉がカラカラで今ならリーマスの飲む甘い紅茶も飲める気がした。
とにかく、早く結論をと言ったと思う。
ペラペラと喋っていた名前がピタリと黙ったのでちゃんと言えていた筈だ。


「あのね、私…シリウスが好き」

「え?」

「だと思う」

「は?」


思わず思い切り声が出てしまう。
名前は相変わらずペラペラとよく口が回る。
何を言っているのか解らないけれど、先程までの心臓の音はしない。
今はもうなんだか顔が緩んでしまう。
目の前で顔を赤くして慌てている存在が愛おしい。


「名前」

「はい」

「俺の事好きなんだよな?」


だと思うなんて小さな声で付け足されてしまった。
けれど今の俺はそんな事は気にしない。
二人の間にあった距離を埋めると名前の全ての動きが停止した。


「大丈夫、名前は俺を好きになるよ」


頬にキスをすれば真っ赤な顔でぱくぱく口を動かしている。
しかし、小さく頷いたので嬉しくなって思い切り抱き締めた。




(20120205)
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