クリスマスの夜、シリウスがくれた薔薇の花束。
さすがに全てとはいかなかったので一輪だけ魔法をかけた。
あのシリウスが照れながら渡してくれた薔薇。
普段気障な台詞を平気で言うくせに。
思い出しただけで恥ずかしくなってしまう。


一人で騒ぎ出したい気分になったけれど薔薇を見て一気に気分が落ち込んだ。
私の未熟な魔法ではせいぜい二ヶ月が限度。
そろそろ期限が来ているようで、少しだけ花びらが傾いてきている。
同じ魔法をかけても良いけれど前よりも綺麗に保てるか解らない。


談話室への階段を降りながら図書室の本を思い浮かべる。
そういう関係の魔法は少し難しいのだ。


「よう!」


掛けられた声に振り返って隣に並んだシリウス。
珍しく早起きだねなんて言ったら頬を軽く摘まれた。
一緒に談話室を抜けて吹き抜ける風に寒い寒いと騒ぎながら歩く。
さり気なく風上にたってくれる辺り、とても素敵。


「何か悩み事か?さっき溜息吐いてたろ」

「悩み事って程じゃないんだけど」


薔薇に魔法をかけた事はシリウスに言っていた。
私より頭の良いシリウスだからもしかしたらどうにかできるかもしれない。
枯れそうだと伝えれば驚きもなく頷いた。
ちょっとした期待を込めて顔を見るけれど何か考えている。


「やっぱり、無理よね」

「うん…やっぱり花はいつか枯れるんだよ」

「そうよね」


まだ綺麗に咲いているうちに写真を撮ろうかな。
カメラは誰かが持っているような気がするし。
もしかしたらと思ってシリウスを見るにっこり笑っていた。


「花ならさ、俺がまたプレゼントするよ」


名案だと笑いながら頬にキスをされる。
廊下でなんてと抗議しても笑ったままのシリウス。
だから、仕返しに耳元で囁いてみた。


「また真っ赤になるの?」




(20120205) for 冬 様
いつか、花は枯れてしまうものだよ
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