闇の帝王が敗れてまさに城は今パーティー真っ最中だった。
傷付いた人も大切な人を失った人も居るけれど、今はただ皆ホッとしている。
主役の筈のハリーはいつのまにか居なくて、それでも皆気にしなかった。


そんな中私はあちこち見回してやっと見つけたプラチナブロンド。
両親と此処に居ても良いのかという顔の三人。
座っている彼を見つけて私はホッと息を吐いた。
そんな彼に話しかける人は居なかったのに、近寄っていく一人。
彼女は私も見覚えがあって彼の瞳がいつも追いかけていた人。


彼を抱き締めて会話を交わして彼女は離れていく。
彼はそんな後ろ姿を目で追って不意に表情が歪んだ。
立ち上がった彼が此方に歩いてくるのを見て何故か私も立ち上がる。


「あ、あの」


近くまで来た彼に思い切って声を掛けると青い瞳が私を捉えた。
私の名前をポツリと呟いて足を止めてくれる。
言いたい事は沢山あるけれど言葉にならない。


「マルフォイ、怪我してる」

「あぁ、これはさっき…いや、良いんだ」

「駄目だよ」


ハンカチを出して彼の口元に当てる。
避けられるかと思ったけれど、彼は大人しくされるがまま。
背が高い彼の口元に合わせて腕を伸ばすのも不思議と平気だった。


「君のハンカチが汚れてしまうだろう」

「良いの。使って」

「…すまない」


彼は私の手からハンカチを受け取って自分で口元に当てる。
いつもの自信に満ち溢れた喋り方ではなく素直な喋り方。
多分これが本来の彼で、それを引き出したのはきっとあの、彼女。


「他に怪我はない?」

「僕は大丈夫だ。ハンカチ、洗って返すよ。有難う」


そう言って彼はふんわりと笑った。
それは見た事の無い彼の柔らかい笑い方で、一気に私の心臓は騒ぎ出す。
それじゃあ、と再び歩き出した彼に慌てて声を掛ける。
振り返った彼の青い瞳がとても綺麗で変に泣きそうになった。


「マルフォイ、無事で良かった!」

「君も」


それだけ、呟いて今度こそ彼は歩いて大広間を出て行く。
これからきっと時間は沢山あって、またゆっくり話をする機会もあると思う。
視界の端に幸せそうに笑う彼女が見えた。




(20120929)
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