気分は最悪でとにかく一人になりたいし誰とも話したくない。
空いてる部屋を見つけて其処に籠もって私はただ涙が出るままにしている。
どれくらい泣いたか解らないけれど、まだまだ止まりそうにない。
一応人除けの呪文をかけてはみたけれどどれだけ効くか不安ではある。


ごめん、と言ったフレッドの声と顔が今でも浮かんで消えていく。
多分この涙が止まらない位に私はまだフレッドが好きで暫くきっと顔を見たいような見たくないような気分に襲われる。
こういうところは寮生活の嫌なところだと思う。
明日にはきっと目が腫れてしまうから今夜の間に呪文を探さなくては。


ガチャ、と扉が開く音がして私は縮こまって可能な限り隠れる。
このまま気付かずに出て行ってくれれば良いのに。
そう思うのに入ってきた人は一向に出て行こうとしない。


「名前」


名前を呼ばれたという事は相手は私だと解った上で近付いてきた。
そしてよく知った声に思わず顔を上げる。
相手は隣に座り、私の頭を撫で始めた。
涙で滲む視界でフレッドに見えたけれど違う。
優しくふんわりと笑うこの表情はジョージだ。


「今、フレッドから聞いてさ。慌てて来たんだけど、やっぱり泣いてたな」


まだ止まる気配の無い涙をジョージの指が掬う。
優しくされてしまうと今の私は弱い。
ただでさえ止まらない涙が余計に止まらなくなってしまう。


ジョージはずっと私が泣き止むまで何も言わず側に居てくれた。
頭を撫でて、偶に涙を拭ってくれて。


「俺が言うのもおかしいけど…ごめん」

「どうしてジョージが謝るの」

「うん…おかしいな」

「おかしいわ」


泣きすぎて腫れた瞼が重くて笑うのにも少し違和感を感じる。
気付いたジョージは魔法で氷を出して当ててくれた。
細かい事によく気付いてくれるのはいつもジョージ。


「どうして私が此処だって解ったの?」

「名前、昔から泣く時は此処だろ?」

「秘密の場所なのに」


ジョージは笑うだけで答えるつもりは無いらしい。
確かにフレッドとジョージはホグワーツの抜け道や隠し部屋をよく知っていた。
だからこの部屋を知っていたとしても不思議じゃない。
話を打ち切るように立ち上がったジョージが手を差し出す。
その手をぼんやり見ていたら手を取られて引っ張られた。


「ジョージ?」

「フィルチに見つかる前に帰ろう」


ぎゅっと手を握ったまま、歩き出すジョージに慌てて着いていく。
少し前を歩く大きな背中はフレッドによく似ている。
けれど確かに違って、ジョージの方が少しだけ丸い。


「ジョージだったら、良かったのかしら」


ボソッと呟いた声に振り向いたジョージに何でもないと答える。
ジョージはジョージであってフレッドではないのだ。




(20120903)
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